楔状欠損(けつじょうけっそん)とは……知覚過敏の症状も
「くさび状欠損」とも言われ、歯のエナメル質と象牙質の境目付近の歯が、くさび状にえぐれたように減ってしまう現象です。歯の表面の白いエナメル質は刺激に対して無反応なため、痛みやしみるなどの知覚が起こりません。しかしエナメル質の内部や歯の根元付近に見えることがある黄褐色の象牙質は、水などの温度刺激や接触痛などを歯の内部の神経に伝えるため、虫歯がなくても少しの刺激で知覚過敏を引き起こします。楔状欠損の歯は、根の部分がえぐれるように磨り減っていくのが特長です。日常的な臨床の中でも、40歳以上であれば比較的多く見ることができます。楔状欠損の確認方法としては、指の爪で歯の根元から歯の先端方向に滑らせてみます。正常であればスムーズに滑りますが、引っ掛かりがあったり、段差が感じられる場合は要注意。
進行すると木こりが木を切り倒すように根元がくさび状の切れ込みになって、最後は歯が折れてしまうこともあります。ひどい知覚過敏を起こすことはまれで、数年~数十年かけてゆっくり切れ込みが深くなっていくことが多いために、ただの知覚過敏として放置してしまうこともあるようです。
楔状欠損の原因……強すぎる歯磨きではなくかみ合わせに問題
昔は歯の根元が削れるのは、すべて力を入れすぎたブラッシングが原因と言われたこともありますが、実際には、同じようにブラッシングしていても、真ん中の 1本だけ楔状欠損になって、前後の歯は正常といったこともよく起きていました。さらに弱いブラッシング圧なのに歯が磨り減っていくことがありブラッシング以外の原因が研究されていきました。現在、原因として有力なのは、かみ合わせの際に歯の衝撃によって歪みや応力が歯の根元付近に蓄積することで起こる「マイクロクラック」という目で見えないほどの微細なひび割れです。実は歯には構造的に1本1本に噛みあわせが接触する最適な場所があり、この場所で噛む場合にはマイクロクラックが起こりにくくなっています。
しかし歯の持つ許容範囲を超えたかみ合わせが起こす衝撃は、歪みや応力となって歯の根元付近に蓄積します。「マイクロクラック」は唾液によって修復されますが、クラックと修復を繰り返しながら徐々に磨り減ったようにえぐれていくというものです。
しかも年齢とともに顎の関節部分の磨耗などで、顎の動きが変化して、はぎしりのような動きをすると、若い時より歯に負担がかかりやすい状態になります。そのため年齢とともに楔状欠損もよく見られるようになっていきます。
くさび状欠損の治療法
■初期~中期のくさび状欠損の治療法小さな楔状欠損は、磨り減った象牙質とエナメル質を虫歯を埋める樹脂と同じようなもので埋め戻します。詰め物で埋めると象牙質の露出面がなくなるため、水がしみたりすることがなくなります。
■末期のくさび状欠損の治療法
歯が折れそうなほど進行した楔状欠損は、歯の神経を抜いてから歯を金属やセラミックなどでかぶせて形を取り戻します。
楔状欠損は、かみ合わせの衝撃を歯の許容範囲に収められるように、負担になっている歯の形態の修正することができると、すり減りを抑えることができるようになります。そのため、歯と歯茎の境目のすり減りが気になりだしたら、定期的にかかりつけの歯科医院でチェックしてもらうことをおすすめします。
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