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苗字が違うと「家族の絆」は弱まるのか

一向に進まない「選択制夫婦別姓制度」の問題。人にとって、苗字とはいったいなんなのか。記号なのか、アイデンティティなのか。そもそも、夫婦は同姓であるべきなのだろうか。別姓制度を、もう一度、考えて直してみたい。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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日本では、結婚しても夫婦別姓(本来は別氏が正しいらしい)が選択できない。その論議は、1950年代からおこなわれているが、一向に進まない。議員の中には、「苗字が違うと、家族としての一体感がなくなる」という声もある。苗字とはいったい、なんなのだろう。人はどれほど自分の名前にアイデンティティを抱くものなのだろうか。

苗字は記号か自分自身か

婚姻届

苗字が違うと家族になれないのだろうか

私事だが、婚姻届を書くとき、夫となった人に「どっちの苗字を名乗る?」と尋ねた。彼は目を丸くして、「だって妻が夫の苗字を名乗るものでしょ」と言った。今でもそういう認識をもっている男性は少なくないのかもしれない。

「どっちを名乗ってもいいんだよ」
「だって、オレ、養子に入るわけじゃないし」
「私の親とあなたが養子縁組をしない限り、養子にはならないの」
「へえー」

そんな間の抜けた会話のあと、彼はわかったのかわからないか不明だが、ごねるように言った。

「オレの苗字になるのが嫌なの?」
嫌とかいいとかではなく、なぜ女性が男性の苗字を名乗る、と譲らなくてはいけないのか、自分の苗字を変えなくてはいけない女の気持ちを少なくとも考えたことがあるのか、と言いたかった。なので言った。

「結婚って、そういうものじゃん。どちらを名乗ってもいいとしても、オレは会社員だから手続きが面倒だし、長男だから」

は? フリーだって銀行や免許証など変えなくてはいけないことがたくさんある。それに私だって長女だよ……。

親しい女友だちにそのことを愚痴ったら、彼女は意外なことを言った。
「私は長年、自分の苗字が嫌いだったから、結婚して苗字が変わるのはすごくうれしかった」
別の友人は淡々と言った。
「名前なんて記号に過ぎないわよ。なんだっていいのよ」

女は子どもの頃から、好きな人の苗字に自分の名前を書いてみたりするのだそうだ。私はそんなことをしたことがない。

自分の名前に特に愛着があるわけでもないのだが、婚姻届を書いたときの不快感はいまだに忘れられない。仕事上はもちろん旧姓を使ったが、いつもお尻のあたりがもそもそするような居心地の悪さにとらわれていた。その後、離婚してひとりの戸籍を作って旧姓に戻り、ほっとしたのを覚えている。
気づかなかったが、私にとって、名前はアイデンティティに関わるものだったのだろう。決して単なる「記号」ではないのだ。
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