ボロディン弦楽四重奏団 ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第1、8、14番、他
創立70周年の記念すべき年に、ボロディン弦楽四重奏団がDECCAと録音契約を結び、彼らと縁の深いショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲全曲録音をスタートさせました。チクルス第1弾は、最も完成度が高いとも言われる第8番を含む4曲。東京の春・音楽祭・来日公演での演奏曲目も含む来日記念新譜となります。続くチクルスもご期待ください!
■ガイド大塚の感想
ショスタコーヴィチにとっての弦楽四重奏曲は、交響曲と並んで15曲書いた極めて重要なジャンル。過去に録音された全集とは違うメンバーによる、新たなショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲チクルス。曖昧なところのないメリハリの効いた演奏で、そもそも割とストレートに描かれたショスタコーヴィチの重い内面を描き出す。
コッポラ(クラリネット)、シュタイアー(ピアノ) ブラームス:クラリネットとピアノのためのソナタ集
ブラームス最晩年の屈指の名曲クラリネット・ソナタ、およびピアノ小品(ソロ)というプログラムの1枚。名手シュタイアーとロレンツォ・コッポラという組み合わせです。クラリネットは、ブラームスがクラリネット作品を書くきっかけを与えた当時の天才奏者ミュールフェルトも使用していたモデルの楽器を使用。シュタイアーが奏でる1875年製のスタインウェイと、バランス的にも音色的にも、素晴らしく融け合っています。
■ガイド大塚の感想
これはまずピアノのシュタイアーが見事で、引き締めるところはキリっとさせ、甘いところはどこまでも甘くさせる。そこにコッポラのクラリネットが絡み、溶け合うのだが、本当にお互いの楽器の音色がよく合い、時に気が遠くなりそうなほど甘美で心地良い。
シクリャヴェル(クラリネット) フランス近代、昔日のクラリネットとピアノの響き
100年も過ぎると、音の感覚はだいぶ変わるもの。クラシックの世界でもとびきり洒脱なところが愛されているフランス近代音楽も、代表的な作曲家たちが活躍した20世紀初頭当時は、今とはだいぶ違う楽器で演奏されていました。ドビュッシーも愛したベヒシュタイン社の19世紀末製ピアノと、1930年パリ製のクラリネットで織りなされる響きは、シャネルやディオールが人気を集め、シトロエンはじめ自動車が普及しはじめた頃の、パリの音。
■ガイド大塚の感想
プーランク、サン=サーンス、ドビュッシー、ミヨーらの曲が収められ、同じクラリネットとピアノでも、上のブラームスとは全く異なり、こちらはとにかく粋。クラリネットの伸びやかさ、キレが近代を巧みに描く。インマゼールのピアノも抑制の効いたもので、いたずらっぽさを少しだけ残した上品さ。
デュオ・レゾナンス(ギター) ひびきあう対話 ~ギターふたつで、ラテンの響きを~
ギターは、ひょっとするとピアノより広く世界中で使われている楽器かもしれません。伝統音楽シーンでもよく愛奏されているところ、この楽器を生んだ国スペインの音楽との相性はやはり抜群!それを弾きこなす才人も世界中にいるけれど、細やかでおしゃべりなフランス人奏者たちの手にかかると、楽器ふたつの対話が何やらすてきなフランス映画みたいに。腕前確かな俊才たちが、自ら絶妙編曲も交えておくる、スペイン語圏の名品群。
■ガイド大塚の感想
スペイン語圏のギター作品と言っても、フラメンコギターのように掻き鳴らされるものではない。息の合った2本のギターが優しく目くばせし爪弾かれるよう。ヒナステラなどオーケストラだと派手な印象だが、ここではとにかくお洒落。日常の空気を柔らかいものに変えてくれるような素敵な1枚。
小菅優(ピアノ) ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第29番「ハンマークラヴィーア」、他
世界を舞台に活躍する若き日本人ピアニスト小菅優が2011年から着手した「音楽の新約聖書」といわれるベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集録音、全5集(各2枚組)の4作目。「極限」と題され、最大の問題作にして難曲「ハンマークラヴィーア」を中心としたシリーズの中でもひとつのクライマックスを築きあげるものになりました。
■ガイド大塚の感想
やはり注目はハンマークラヴィーア。ベートーヴェンの作った大伽藍をがっちりとした安定感と、繊細な彫塑で、見事に構築していく。めくるめく複雑な楽譜を、変幻自在で指の都合など関係なく思う音世界を紡ぎ出す。それはピアニストに求められる基本的なことだが、それをここまで到達して行えているのが聴いていて気持ち良く、また味わい深い。特にやはり終楽章の次第に熱を帯びていく感じと、一変して優しく始まり再び花開いていくコラールなど、充実している。
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