手間のかかる食卓塩を使って、微量でおいしく召し上がる工夫を!写真はヒマラヤの岩塩
高血糖と高血圧は血管に大きなダメージを与えますから、どうしても高血圧をうまく管理できない人は自分の塩分摂取量を測ってもらうのも一案です。
自分の塩分摂取量を知る方法
最も正確に測定できるのは、自分が一日の内に食べた物をすべて2人分用意して、そのうちの1人分を全て集めて科学的に分析測定する方法です。しかし、大がかりな測定になるし費用もかかる割には、たった1日ではその数値にあまり期待がもてません。そのため、あまり行われてないようです。その他の食事調査法としては、24時間思い出し法、頻度調査法、食品を計量する秤量記録法などがあります。食塩摂取量のみを調べるのであれば、比較的正確で簡単なのは一日の尿をすべて採取し(蓄尿といいます)、これを分析して1日のナトリウム排泄量を測定する方法です。1日の食塩摂取量の90%以上が尿に排泄されるので、1日の食塩排泄量は1日の食塩摂取量と見なすことが出来ます。ナトリウム量から食塩量(塩化ナトリウム)を換算するには2.54をかけ算すればいいのです。
食塩制限が必要とされる人は食事調査法でも尿中ナトリウム排泄量でもいいですから、数カ月の間に4~5回食塩摂取量を測ってもらうと、自分の摂取量が平均値として分かるので減塩の行動計画が具体的に立てやすくなります。病院の内科や循環器病を専門にしているクリニックで測定してもらうといいでしょう。外食や加工食品の摂取でナトリウムの量が変化するので、どうしても4~5回は検査する必要があるそうです。
病院の臨床検査データを読む
臨床検査表には、血圧に関わる食塩や野菜・果物、微量ミネラルのデータがあります。糖尿病の定期診断の時に医師がいろいろな検査項目をチェックしていますが、皆さんはそのプリントをもらっていますか?欲しいと言えばもらえるはずですからファイルしておきましょう。必要に応じて検査した微量ミネラルの数値がありますが、体内の水分調節、つまり血圧に直接関わっているのは電解質のNa(ナトリウム)、K(カリウム)、Cl(クロール、塩素)です。体重70kgの男性には全体として42リットル(L)の水分があり、細胞外液として14L(血しょう2.8L+間質液11.2L)、細胞内液28Lとなっています。ナトリウムと塩素が細胞外液にあり、カリウムが細胞内液にあって浸透圧を一定に保っています。
ナトリウムと塩素(つまり、食塩)は体重70kgの男性で各々約100g(食塩として200g)あります。点滴の生理食塩水を味見したことがありますが、塩分0.9%のかなり塩味の強いものでした。
一般に、電解質のNa、K、Clに限って慣用単位のmEq/L(ミリイクイバレント・パーリットル)が使われます。何とも見慣れない「濃度を示す単位」で、日本語では「ミリ当量」といいます。日本や米国では大部分の臨床検査結果が慣用単位で表示されていますが、多くの国では国際単位系(SI)または国際単位(IU)が用いられるので、これらの電解質もmmol/L(ミリモル・パーリットル)で表示されます。
幸いなことにNa、K、Clはイオン価が「1」なので、これらに関してはmEq/Lとmmol/Lは同じ数値になっています。参考値としてNaは135~147mEq/L、Clは98~108mEq/Lです。諸外国で受診する時は検査表の数値単位に注意してください。
カリウムは体内にはナトリウムより多く含まれていて130~150gあります。その70%は筋肉にあって、上記のように細胞内にある最も主要な陽イオンなので、細胞外液である血液検査では3.5~5.0mEq/L程度と僅かしかありません。カリウムは体の排泄能力が高く、野菜や果物に多く含まれていて、体内のナトリウム蓄積を防ぐ作用があるので、ヘルシー食として勧められているのはご承知のとおりです。ただし、腎機能の低下している人には高カリウム血症という極めて危険な状態を引き起こしかねないので、糖尿病患者は医師の指示に十分に注意しなければなりません。
この電解質の濃度(浸透圧)は生命維持のために必要なものですから数値はあまり動きません。体は体内の水分量を増減させて濃度を一定に保ちます。この水分量の変化が高血圧と脱水症状に結び付きます。
軽い糖尿病の高齢者に起きることがある高血糖高浸透圧症候群という意識障害を伴うような急性合併症があります。薬剤や感染症、火傷、肝・腎障害などと共に脱水も原因になりますが、明らかな高血糖値と共に血しょうナトリウム濃度の上昇>150mEq/Lが診断の目安の一つになります。これからの季節は熱中症と見誤るこの合併症にも注意です。