≪2016年公示地価は全国平均で上昇、各地の動向を探る≫ |
2015年1月1日時点の公示地価が3月18日、国土交通省より発表されました。このところ株価の高騰が続き、景気拡大を示すような報道が増えるとともに、大手企業のベースアップも相次いでいるようです。その一方で、まだ景気回復を実感できない人も多いのではないでしょうか。景況感の二極化と同様に地価の二極化も進んでいるようです。
全国平均では、住宅地が7年連続の下落となるマイナス0.4%でしたが、下げ幅は5年連続で縮小しています。商業地の変動率は0.0%の横ばいで、7年ぶりに下落を脱しました。
3大都市圏では住宅地の47.0%、商業地の69.1%が上昇を示し、住宅地平均は0.4%のプラス、商業地平均は1.8%のプラスで、いずれも2年連続の上昇となっています。
2015年(平成27年)の公示地価について、その主な動きを確認しておくことにしましょう。
公示地価とは?
公示地価とは、地価公示法(昭和44年法律第49号)に基づき、国土交通省による土地鑑定委員会が毎年1回公示する、1月1日時点における標準地の価格で、公共事業用地の取得価格算定の基準とされるほか、一般の土地取引価格に対する指標となることを目的としています。2015年の公示対象市区町村は1,376(東京23区および785市530町38村)、対象地点の数は前年と同じく23,380(うち320地点が選定替え)となっています。ただし、このうち原発事故による避難指示区域内の17地点については、引き続き調査が休止されています。
公示地価はその土地本来の価値を評価するため、現存する建物などの形態に関わらず、対象土地の効用が最高度に発揮できる建物などを想定したうえでの評価がされることになっています。
なお、公示地価についての詳しい内容は、国土交通省の「土地総合情報ライブラリー」にアクセスすることで、1996年(平成8年)以降のものを見ることができます。
3大都市圏は2年連続の上昇も、その伸びは鈍化!?
公示地価は2009年に下落へ転じたものの、2011年からは下落率の縮小傾向が続いています。全国平均は住宅地が7年連続の下落でしたがほぼ横ばいの水準に近付き、商業地は厳密にいうとマイナス0.028%のようですが、横ばいに転換したといえるでしょう。3大都市圏では、大阪圏の住宅地が横ばいだったのを除き、いずれも2年連続の上昇となっています。ただし、東京圏の住宅地および名古屋圏の住宅地と商業地は、前年よりも上昇幅が縮小しました。
地価上昇への転換が比較的早かった地域での調整局面ともいえそうですが、消費税率引き上げの影響が少なからずあるのかもしれません。
上昇地点の数(全用途)は7,569で前年の7,102からは増えているものの、前年は約3.5倍の急増を示していたため、かなり勢いが鈍った感じもするでしょう。横ばい(変動率0.0%)地点の数は4,288(前年は3,536)、下落地点の数は11,186(前年は12,379)でした。
上昇地点の内訳をみると、東京圏が3,478で前年の3,522からわずかに減少、大阪圏が1,000で前年の927から少し増加、名古屋圏が877で前年の861からわずかな増加、地方圏が2,272で前年の1,792から大幅な増加となっています。
前年まで2年続けて3大都市圏のなかで最も大きな伸びを示していた東京圏ですが、今年は住宅地の上昇地点が53.9%で前年の56.4%から落ち込みをみせ、商業地の上昇地点は77.2%で前年の75.5%から少し増えています。
また、大阪圏は住宅地の上昇地点が28.9%にとどまり、下落地点が39.2%にのぼるなど、東京圏や名古屋圏に比べて地価の回復傾向に遅れがみられるようです。
さらに、地方圏は住宅地の69.1%、商業地の69.0%といずれも約7割の地点が依然として下落しています。上昇地点も一部の都市や地域に集中 しているため、全体的には厳しい状況が続いているといえるでしょう。
都道府県別平均は、住宅地で8都県、商業地で11都府県が上昇
都道府県別平均では、住宅地で千葉県と福岡県、商業地で福島県が新たに上昇となっています。前年も上昇だったところを含め、住宅地では8都県、商業地では11都府県が上昇でした。ただし、最大の上昇率を示したのは住宅地が福島県の2.9%、商業地は東京都の同じく2.9%であり、平均でみるかぎりはまだ地価急騰という状況ではないでしょう。
住宅地が上昇だったのは、宮城(2.3%)、福島(2.9%)、千葉(0.1%)、東京(1.3%)、神奈川(0.4%)、愛知(0.8%)、福岡(0.1%)、沖縄(0.6%)の8都県です。
商業地が上昇だったのは、宮城(2.3%)、福島(0.8%)、埼玉(0.5%)、千葉(0.6%)、東京(2.9%)、神奈川(1.4%)、愛知(1.4%)、滋賀(0.2%)、京都(1.2%)、大阪(2.0%)、沖縄(0.8%)の11都府県です。それ以外に前年まで下落していた福岡が今年は横ばい(0.0%)でした。
しかし、前年はすべての都道府県で住宅地、商業地とも「プラス方向への変移」だったのに対して、住宅地では埼玉県が前年の上昇から横ばいになったほか、5都県で上昇率が縮小する「マイナス方向への変移」でした。商業地でも3県で上昇率が縮小しています。
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