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対談:ブルーボトルコーヒー創業者×大坊珈琲店店主(3ページ目)

ブルーボトルコーヒー2号店の青山カフェがオープンしました。来日した創業者のジェームズ・フリーマン氏と、幻の名店「大坊珈琲店」店主、大坊勝次氏の味わい深い対談をお届けします。

川口 葉子

執筆者:川口 葉子

カフェガイド


対談中

ジェームズ・フリーマン氏


大坊:ジェームズさんが店にいらしていただいたとき、カウンターに座ってコーヒーが出てくるまでに、少し時間がかかったと思います。そのとき、先ほどおっしゃった「場の空気を壊してはいけない」ということの他に、何かお考えになりましたか?

フリーマン:いつも「これは何グラムなんだろう?」とか「どうやっているんだろう?」とか、吸収して参考にしたいと思いながらカウンターに座っていました。大坊さんの所作や、どこに何を置くかなど、決まったルールの中で動いていたと思いますが、それを見て学んでいました。

ていねいな仕事は伝染する(大坊)

大坊:口はばったいことを言うかもしれないけれども、ひとつは「様式」というものがありますね。どんな場にも様式があって、大坊珈琲店には大坊珈琲店の様式があったんじゃないかと思います。そして、そこに座った人が、自分もその様式の一部を担わなきゃいけないと思うことがあるらしい。たとえばこれは変な例ですけれども、カウンターに座っていて、隣のお客さまが帰られるときに、店の人が「ありがとうございます」と言いますね。そのときに横に座っていた自分も、同じように言いたくなることがあるんじゃなかろうか。こればバーのようなところでも起こることだと思います。
もうひとつ。料理でもカクテルでもコーヒーでも、ひとつひとつをていねいに作る。決して宝石のようなものを作るわけじゃない。単にコーヒーを一杯作るだけだけれども、ていねいに作る。そういうことは、それを見ている人に伝染するんじゃないだろうか。

大坊勝次氏

大坊勝次氏


フリーマン:同感です。大坊珈琲店には秩序があり、完璧で、非常にていねいでした。そんな言葉を並べると居心地が悪そうに聞こえますが、それがホスピタリティとともに感じられるのが素晴らしかった。その場所にいて気持ちを集中していると、自分も中に入り込んで、その世界に連れて行っていただけるような感覚でした。大坊さんとお客さまとのコラボレーションによって、空気が作られていたと思います。
私たちの店はまだそのレベルまで到達できているわけではないし、スタイルも違いますが、一杯ずつコーヒーをドリップするのをお客さまが見てくださっていて、お待たせしてはいますが、淹れる行為に注目して時間を忘れていただけるのであれば嬉しいと思います。

コーヒー1杯300ccの理由

大坊:うちではコーヒーは50ccとか100ccの量でお出ししていましたが、どうして300ccも作るんですか?

フリーマン:私はデミタスのような少量の濃いコーヒーも好きですが、お店ではアメリカ人の好みに合わせてドリップしていて、豆の量や抽出量もそれに合わせて指導しています。それを変えたくないので、日本でも同じように300ccで提供しています。もうひとつ、コーヒーが冷めて香りが変化していく過程も好きなんですが、それはある程度の量がないと楽しめないことですね。

大坊:温度が下がっていくにつれて、味も変わっていきます。なるほど、わかりました。

そもそも、日本の喫茶店に興味を抱いたきっかけは? 次ページでどうぞ。
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