悲運のオペラ「運命の力」

黒猫

黒猫より不吉なオペラ「運命の力」

もう一つのエピソードは悲劇です。同じくヴェルディの「運命の力」は、オペラ歌手やファンから“悪運のオペラ”として恐れられています。

「運命の力」は、帝政ロシア時代に、帝都サンペテルスブルグのマリインスキー劇場からの依頼で書かれた作品です。そのため、イタリア語の他にも、ロシア語で歌われるバージョンも存在します。当時、この作品の誕生は音楽界で大変な話題となり、第4回目の公演では皇帝アレクサンドル2世も観劇しました。

「運命の力」は、スペイン、セビリアの貴族の娘レオノーラとドン・アルバロの悲恋の物語です。ドン・アルバロには南米の原住民の血が混じっていたため、レオノーラの父が結婚に反対します。ある日、銃の暴発事故で、ドン・アルバロはレオノーラの父を殺めてしまいます。駆け落ちした二人は生き別れになりました。父の復讐を誓うレオノーラの兄ドン・カルロはドン・アルバロとの決闘で瀕死となりますが、最後の力を振り絞って偶然そこに居合わせたレオノーラを刺してしまいます。
 

悲劇のエピソード

この作品は、世界でも屈指の人気を誇る作品の一つですが、悪運をもたらすという噂が常について回ります。初演の時から今日まで、この作品を巡って不幸な出来事が起こり続けているからです。ドン・アルバロ役を演じた途端に喉に支障をきたしたテノール歌手や、公演後に突然死亡したり、若すぎる引退を余儀なくされた歌手もいます。

1960年3月4日には、アメリカのバリトン歌手がドン・カルロ役でアリアを歌う時に、突然の心臓発作により舞台の上で死亡しました。それ以来、歌手たちはこの悪運のオペラへの出演を敬遠しています。

実は、初演時には、主人公のドン・アルバロも絶望して投身自殺し、主要な登場人物が皆死んでしまうという内容でした。後にヴェルディ自身が書き直し、1869年からの公演では、ドン・アルバロは生き残る内容になっています。このような経緯が、不幸な「運命」をもたらしたのかもしれません。


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