オペラ歌手は必ず太ってる?

舞台は歌手を痩せさせる?

舞台は歌手を痩せさせる?

オペラ歌手といえば、モンセラート・カバリエやルチアーノ・パバロッティのように丸々と太っているイメージが強いのではないでしょうか。実際に、ルネッサンス期から太っている歌手のほうが良い声が出せるとされてきましたが、長いオペラ史上、例外はもちろんたくさんいます。

ワグナー、プッチーニ、ヴェルディなどの作品を歌い上げるには、大きな肺活量を要求されますが、それだけでは十分ではありません。ぶれない声、音楽センスと、技術が必要です。

1950年代初頭にマリア・カラスは大変太っていて、加えて素晴らしい歌唱力を誇っていました。その後、彼女は痩せたので、そのせいで声も細くなったという評論家も確かにいます。しかし、実際には、ジョン・F・ケネディの未亡人であるジャクリーン・ケネディと結婚した、「20世紀最大の海運王」アリストテレス・オナシスとの長年にわたる不毛な恋愛関係に悩んだ結果、歌手としての力量を落としてしまったのだという意見もあります。このように、太った歌手=素晴らしい声量と歌唱力、痩せた歌手=貧しい声量と歌唱力とは一概には言えません。


本当は多い痩せているオペラ歌手

では、痩せていてもオペラの世界で名を馳せた歌手はいるのでしょうか。実は、現在は、痩せている歌手のほうが太っている歌手よりも多いくらいです。むしろ、どんなに力量のある歌手でも、太りすぎていては舞台で重要な役をもらえなかったり、CDが思うように売れなかったりします。

例えば、120キロのソプラノ歌手デボラ・ヴォイトは、オペラ版ロミオとジュリエットと言えるワグナーの『トリスタンとイゾルデ』のイソルデ役を演じることができませんでした。


ホセ・カレーラスは、背が低く、プラシド・ドミンゴは、デビュー当時とても痩せていました。カレーラスは、役に入り込むことで声の細さを補ったのです。また、彼は、白血病を克服し今でも歌い続けています。


ドイツ人テノールのヨナス・カウフマンは、威厳のある、詩的なとても美しい声で20世紀初頭の英雄的なテノールたちを彷彿とさせる歌手。彼はとても痩せていますが、その声は一聴の価値があります。


ペルー人テノール、フアン・ディエゴ・フローレスも、背が低く痩せています。彼の場合は声もか細いのですが、ドニゼッティの『連隊の娘』のアリアに散りばめられた9回のハイCの音を瞬きもせずに歌い上げることができます。これは、たくさんの太った歌手たちが挑戦しては失敗してきた偉業です。


ドイツ人バリトン歌手のトーマス・クヴァストホフは、母親が妊娠中にサリドマイドを服薬していたため、生まれつき腕がありません。身長は1.43メートルで、太ってもいませんが、ドイツが誇る素晴らしいテノールです。彼の声は私たちの心の琴線に優しく触れます。



肉体的特徴には関係ないオペラへの愛

オペラは舞台芸術のため、どうしても歌手の外見に注目して、太った歌手ほど良い声をしていると考えがちです。

家でCDを聴いているときでも、舞台鑑賞に出かけたときでも、数秒でいいので、目を閉じてただ耳に染み込んでくる音だけに身を任せてみましょう。体重や容姿に関係ない、歌手の歌への愛がきっと伝わってくるはずです。


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