食と健康/生活習慣病を防ぐ食事・レシピ

生か加熱、どっちが良い?野菜の「調理」の意味とは(2ページ目)

近年は「生食」や「ローフード」などがよく取り上げられるようになり、巷では「生」か「加熱」のどちらがよいのかを決めたがる傾向があります。今回は改めて「調理」することの意味を考えてみたいと思います。

南 恵子

執筆者:南 恵子

NR・サプリメントアドバイザー / 食と健康ガイド

調理によって、野菜の細胞壁が壊れて吸収率がアップ

「調理」することのメリットもいろいろとあります。

動植物は、細胞を細胞膜が覆っています。動物は細胞膜だけなのですが、植物は細胞膜の周りをさらに細胞壁が覆っています。この細胞壁があることで、植物は動物のように骨格や筋肉がないにもかかわらず、立っていられるのです。

人間は細胞壁を構成するセルロースを分解する消化酵素をもっていません。ですから、野菜に含まれている有効なビタミンやミネラル、フィトケミカルなどの有効成分は、噛む程度では十分吸収されずに、体外に排出され無駄にしてしまう分があるのです。

細胞壁,細胞,リコペン,カロテン

左上の細胞が、破砕・加熱の影響で、細胞壁が壊れるイメージ。


野菜を加熱調理したり、さらにソースやスープのように潰して細胞壁を破壊することで、鉄分やカリウムなどのミネラル、また野菜の色素であるカロテノイド系の成分が吸収されやすくなります。

また一般的な市販の野菜ジュースは製造過程で野菜を破砕・加熱されるので、一部の栄養成分の吸収率が高く、手軽で効率のよい摂り方ともいえます。例えば、トマトの色素成分であるリコピンは生より野菜ジュースなどの加工品では3.8倍(*1)、β-カロテンは、生より加工品だと1.5倍吸収率がアップするというデータなどもあります(*2)。

4つのタイプの活性酸素に応じて、作用する抗酸化成分が異なる

紫外線を大量に浴びたり、疲労や喫煙、多量の飲酒、激しい運動などの大きなストレスよって体内に活性酸素が大量に発生すると、老化や炎症、動脈硬化などにつながると考えられています。

活性酸素を無害化する作用があるものを抗酸化物質と呼びます。抗酸化物質には、生体内でできる酵素の他に、食物から摂取するβ-カロテンやビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールやカロテノイドなどのフィトケミカルなどがあります。

活性酸素には主に過酸化水素、スーパーオキシド、一重項酸素、ヒドロキシラジカルの4種類あり、そのタイプによって、抗酸化物質の作用が発揮できるものは異なると考えられています。

スーパーオキシドや過酸化水素は、体内の抗酸化酵素によって消去することができますが、一重項酸素はカロテノイド系、ヒドロキシラジカルはポリフェノールが消去する作用があり、食事から抗酸化物質を取り入れる必要があると考えられています。

ビタミンCは4種類すべてに働きますが、水溶性なので水分のある血漿中で作用し、脂質でできている細胞膜では働きません。細胞膜で作用を発揮できるのは脂溶性のβ-カロテンやその仲間のカロテノイド(リコピンなど)やビタミンEで、ビタミンEは細胞膜の外側、β-カロテンは内側で働きます。

これから紫外線も強くなる季節ですが、紫外線により発生するのは一重項酸素。カロテノイドが有効とされていますので、上手に摂るためには、生だけでなく調理したものからも摂る、ということがポイントになります。また抗酸化物質はお互いに助け合うので、一緒に摂ることで、その作用を強めたり長持ちするなど相乗効果があります。

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