軸椎骨折とは
軸椎とは7つある頚椎の上から2番目の骨、頭に近い第2頚椎のことです。この骨の骨折を軸椎骨折と呼びます。珍しい骨折の一つです。軸椎は頭蓋骨の下、頚椎の中の一番上にある骨です。
通常は頭に強い力が働く、飛び込みなどの事故で発生します。若年者では、転落事故、交通事故などでの受傷もあります。高齢者では骨粗鬆症などが原因となり、転倒などの軽微な力での骨折が増えています。
軸椎を単独でみますと、中央前方に歯突起という大きな骨があります。この部位の骨折を歯突起骨折と呼びます。
軸椎には歯突起と呼ばれる大きな部分があります。
それ以外の骨折は関節突起間骨折と呼ばれます。この骨折はハングマンとも呼ばれ、日本にはありませんが絞首刑でみられる骨折とされています。
軸椎骨折が起こりやすい年齢・性差
運動、事故などに伴い発生する骨折ですので、あらゆる年齢層に発生します。高齢者に比較的多い骨折です。軸椎骨折の症状……腫れ・痛み・変形など
骨折した部位の腫脹、疼痛、変形です。通常初期から激痛となることが多いです。軸椎骨折の診断法……X線・CT・3DCT
■単純X線単純X線写真は放射線被爆量も少なく、費用もわずか。その場で撮影も終了し当日説明を受けられるので、整形外科では必ず施行します。
頚椎開口位。このレントゲンでは歯突起がよく撮影されていますが、条件が整わないと診断が難しくなります。
上記の写真は頚椎単純X線開口位の写真。歯突起骨折は見落としの多い骨折とされています。診断が難しい場合、CT、MRIが必要となります。
■CT
単純X線で診断がつかない場合でもCTであれば診断可能です。
頚椎CT像。歯突起骨折が認められます。
■3DCT
CT画像をコンピューターで計算して、3次元画像を表示することが可能です。
3DCT像。よりリアルに3次元画像が表示可能です。この骨折は関節突起間骨折です。
軸椎骨折の治療法
軸椎骨折の治療として保存療法、手術療法の2つの治療法があります。■保存治療
初期治療としてネックカラー、ハローベストなどの固定を行う保存治療をまず行います。状態がよければ、このまま時間をかけて骨折した部位の骨癒合を計ります。長期間の固定が必要となりますので、運動、仕事の制限があります。
小児の骨折では保存治療が選択されます。
・ネックカラー
ソフトカラーという柔らかい装具です。
ハードカラーという固い装具もあります。
ハードカラーと呼ばれる固い装具もあります。
• ハローベスト
ハローベストという装具です。頭蓋骨に金属のネジを打ち金属製の輪を胴体のベストと接続します。
●鎮痛薬
ボルタレン、ロキソニンなど非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAIDと省略されます)を用います。
• ボルタレン:1錠15.3円で1日3回食後に服用。副作用は胃部不快感、浮腫、発疹、ショック、消化管潰瘍、再生不良性 貧血、皮膚粘膜眼症候群、急性 腎不全、ネフローゼ、重症喘息発作(アスピリン喘息)、間質性肺炎、うっ血性心不全、心筋梗塞、無菌性髄膜炎、肝障害、ライ症候群など重症な脳障害、横紋 筋融解症、脳血管障害胃炎。
• ロキソニン:1錠22.3円で1日3回食後に服用。副作用はボルタレンと同様です。
どちらの薬でも胃潰瘍を合併することがありますので、胃薬、抗潰瘍薬などと一緒に処方されます。
■手術治療
骨片が多数あるもの、骨欠損があるもの、靱帯断裂などで整復した骨片の位置が正常な位置関係にない場合、保存治療で癒合しない場合などが手術の対象となります。珍しい骨折ですので、手術療法がよいのか保存療法がよいのかの決定的な診断が難しい場合があります。
歯突起骨折では、偽関節といって、骨癒合を得ることが難しい場合があります。この場合手術が必要です。
歯突起骨折にネジで固定を行いました。
関節突起間骨折でも手術が必要となる場合があります。
関節突起間骨折にプレート固定を行いました。