動物や植物は「細菌」からエネルギーをもらっている?
「人も植物も細菌からエネルギーをもらっていた」……本当でしょうか?
ある理由で細菌が生物内に取り込まれ、共生するようになっていったのです。地球生誕の歴史から振り返って、共生するようになった理由を考えてみましょう。
地球上の最初の生物は酸素を必要としていなかった
地球ができてしばらくは、生物には過酷な環境でした
しかし、当時は酸素はなく大気の中は二酸化炭素ばかり。酸素を作り出す生物がいなかったので当然といえば当然のことかもしれません。当時の生物は酸素以外を利用して生きる生物だったと考えられています。
約27億年前になると、二酸化炭素と水、光を用いて光合成を行い酸素を出す、シアノバクテリアという生物ができました。そして多くの酸素を排出した結果、地球の大気にも酸素が増えていくことになりました。
初期の生物には酸素は毒でしたが、酸素の濃度が増えてくると、酸素を利用して生体活動に有用なエネルギーを作り出せる細菌が現れてきました。酸素を用いると今までとは比較できないぐらいのエネルギーが取り出すことが可能です。酸素を利用する生物は、どんどん増えて進化していくようになったのです。
人類が誕生したのは約700万年前とされており、地球の生命の歴史を1年のカレンダーに見立ててみると、12月31日にあたります。人類が生まれたのはつい最近のことなのです。
人間ならば到底生存できない、過酷な環境下でも生存可能な細菌やウイルスの存在がわかっています。太古の過酷な環境で生き抜いてきた細菌やウイルスの立場から考えると、驚くようなことではないのかもしれません。
細菌が動物や植物と共生するようになった理由
人類繁栄の陰には細菌の力があったのです
このようにして酸素を利用する細菌が進化していった結果、動物細胞の中の「ミトコンドリア」という細胞小器官になったと考えられています。さらに、植物は光合成を行うシアノバクテリアを取り込み、植物細胞の「葉緑体」になったと考えられています。このように生物が別の生物を取り込んで共に生きることを、細胞内共生といいます。細胞内共生をする生物としてはほかに「サンゴ」と「褐虫藻」などが知られています。
細胞内共生説の証拠として、細胞の核のDNAとミトコンドリアや葉緑体のDNAが異なる点もあること、ミトコンドリアのDNAは酸素を使う細菌のDNAによく似ており、葉緑体のDNAはシアノバクテリアのDNAによく似ていることなどが挙げられています。
人体に有用なウイルスとは
ウイルスや細菌が意外なところで活躍しています
内在性レトロウイルスは、さまざまな生物のゲノムに残された唯一の「ウイルスの化石」と考えられています。ゲノムとはDNAにしまわれている、生物がもつ「遺伝情報の全体」のことです。ヒトゲノムの約8%は、ウイルスの残がいである内在性レトロウイルス由来の配列で占められていることがわかってきました。
これらの起源はまだよくわかっていませんが、ウイルス由来のDNAが宿主のゲノム中に組み込まれたときに、何らかのミスで増殖する能力を失ってしまったことなどが原因と考えられています。
ウイルスや細菌といえば、以前は病原体としてばかり扱われてきましたが、現在では善玉のウイルスや細菌が存在するということが明らかになっています。ウイルスや細菌を用いた治療への応用も期待されており、今後の研究の進展に期待が高まっています。