里山の静かな商店街の空き家に出会って
日本百景に選ばれた美しい棚田の風景が続く新潟県十日町市は、国内外から注目を集めるアートトリエンナーレ「越後妻有 大地の芸術祭」の舞台でもあり、アートが里山に活気をもたらした先駆的な成功例としても知られています。
町の静かな商店街に建つ古い空き家をなんとか活用できないだろうか。そんな相談を受けたgift_のふたりは、“当事者”になることを望まれて、空き家をゆっくり時間をかけてセルフリノベーション。若いボランティアスタッフの手も借りながら、1階はカフェに、2階はクリエイターの宿泊を想定したドミトリーに改装しました。
昔ながらの民宿ではなく、センスの良い空間をデザインしたい。カフェでもスパイスを利かせたエスニック料理など、手加減することなくエッジの利いたものを提供したい。しかし、それは里山で受け入れられるだろうか――。
そんな懸念もあったようですが、「海外から来日したアーテイストと地元のおじいちゃんたちがここで仲良くなっていたりして、いつの間にかセグメント化されない、老若男女が交差する場所になりました」
地域住民がなごむ場と、先鋭的なアーティストが集まる場が自然に融合。それはgift_が建物を作ったら終了して東京に引き揚げるのではなく、自らもその地に暮らしながら東京と同じ仕事、同じ生活スタイルで日々を過ごし、町の人々と関わる努力をしてきた成果なのでしょう。
インターネットなどの環境さえ整えば、東京に固執しなくてもデザインの仕事が可能な時代において、都会の刺激と里山の自然を交互に味わうスタイルは、仕事にも生活にも広い視野とインスピレーションをもたらしてくれるようです。新しい豊かな生き方の選択肢。(ちなみに税金も両方に納めているそうです)
旅先の音と日常の音、サウンドトリップ
現在も東京と新潟を行き来しながら、ダブルローカルの暮らしを続けているgift_。清澄白河のGARAGEの一角には、その作品「sound trip」のシリーズも展示されていて、カフェを利用しながら体験することができます。
椅子と白い箱。はしごの上には鳥の巣箱のような白い箱。それらは視覚を遮って耳を開くための装置で、小さな無響室になっているのです。椅子に腰かけて首から上を箱の中に入れたら、どんな音が聞こえてくるのか。小さな音の旅に出かけてみてください。
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