健康に関する“うんちく”が好きなマレーシア人
マレーシアでは、中国やインドのスパイスが一般的なスーパーやマーケットで普通に販売されている。煎じて飲んだり、料理に使ったり。その用途は幅広い
その土地の料理はその土地で食べるのが一番。加えて土地の食文化を知っていれば、さらにおいしさは深まるはず。食いしん坊のマレーシア人ですが、彼らが重視にしているのは、味もさることながら、その料理が体にいい、ということ。
たとえば「鶏、牛、海老などの異なる種類のタンパク質を一緒に摂ると消化に悪い」と考えていたり、中国系のマレーシア人の間では「子供を産んだばかりのお母さんの体には“風の穴”が空いているので、それをふさぐために生姜で煮た鶏肉を食べる」という風習も。ときに迷信かな、と思うものもありますが、幼いころに親から教えてもらった食事と健康の関係はとても大事なのです。そういった食文化から、昔ながらの調理法で作られた伝統料理が今も変わらず人々の食卓に並びます。海外からやってきたファストフード店より、昔からある屋台飯の方がずっと愛されているのです。
漢方やスパイスを上手に使い、健康にいいとされるメニューもたくさん! 今回は、現地で人気の薬膳料理を紹介しましょう。
豚肉を漢方スープで煮込んだ定番の朝ごはん「バクテー」
土鍋タイプのバクテー。ご飯とお茶をセットにして約15リンギ(約500円)。ちなみに、料理名の肉骨茶は、労働者が栄養補給をするために、肉の骨で煮出したスープをお茶がわりにして飲んでいたのが由来
血液サラサラ効果のある「当帰」、冷え性の緩和や消化促進に役立つ「八角」など、10種以上の中国漢方を使った料理。これらの漢方を煮出し、この漢方スープに骨付の豚肉を入れて、コトコト煮込むこと半日以上。すると、豚肉は箸でスッと切れるやわらかさになり、肉のふくよかな旨みがしみだした絶品スープに仕上がります。唐辛子に漬け込んだ辛い醤油をひと垂らしして、味のアクセントにするのもおすすめ。中国系のマレーシア料理で、パワーチャージのために朝食に食べるのが伝統的なスタイルです。
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バクテー(肉骨茶)の食べ方とおすすめ店、本格レシピ
蒸して火を通すことで、風味が際立つ「漢方スープ」
漢方スープ。クアラルンプールの「パビリオン」フードコートに専門店がある。ご飯とおかずをセットにして約17リンギ(約560円)。そのほか中国系の屋台でも食べられる
漢方を調味料として活用したスープ料理。“生命の樹の実”とよばれる栄養価の高い「ナツメヤシ」でスープに甘みを加えるなど、漢方の味が料理のキモになっています。さてこの漢方スープ、具材によって様々な種類がありますが、共通しているのはその調理法。鍋で直接火をいれるのではなく、具をお皿に入れて蒸し器へ。現地で“ダブルボイル”といわれる、蒸気でゆっくりと火を通す調理法で仕上げています。そのため、雑味のない澄んだスープになり、具の肉はとってもやわらか。食べ終わると、体の芯からぽかぽかに温まります。
ペラ州の名物麺。鴨肉の旨みたっぷりの「ダックヌードル」
ダックヌードル。約7リンギ(約230円)。ペラ州のビドーにある「pun chun restaurants」の名物料理。クアラルンプール市内近郊では、アラ・ダマンサラに支店がある
マレーシアの国土は、日本の面積の約9割。こんなに広い土地ですから、日本と同じように、地方ごとに名物料理があります。こちらはマレー半島の北西に位置するペラ州名物のダックヌードル。骨つきの鴨肉がドーンと入ったスープは、漢方の風味が味の決め手。バクテーによく似た種類の漢方で、色は醤油を垂らしたような濃い色ですが、苦味などは一切なし。そこに鴨肉のふくよかな脂がしみだしていて、思わずごく飲みしたくなるおいしさです。この料理、細い卵麺がついてきて、これもまた絶品。鴨肉、スープ、麺料理と、3種の美味を楽しめる贅沢な料理です。
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