自分自身の”謎”が解けないシャーロック・ホームズ像
――『十二夜』の次はご自身がタイトルロールを演じる『シャーロック ホームズ2 ~ブラッディ・ゲーム~』ですね。
橋本
そうなんです! 正直今は『十二夜』の世界に入ることで精一杯ですが、『シャーロック ホームズ』の世界も台本を読むと面白いことになってます、謎めき過ぎ(笑)。謎解き部分に関しては数字の羅列やマタイの福音書の何章の何とか等、トリックも複雑ですし、音楽も超難解でこれは大変なことになってるぞ、と(笑)。
先日、製作発表があったんですが、熱いメンバーが揃い、韓国からはオリジナルキャストのソン・ヨンジンさんも駆けつけて下さいました。タイトルロールを演じさせて頂く以上、苦しみながらもなんとか頑張り抜かなくては、と思ってます。
――同シリーズのシーズン1・『アンダーソン家の秘密』で、橋本さん演じるホームズが事件とその真実に対して葛藤するのが斬新だと思いました。
橋本
彼が歌う「悲しい真実」ですね。シャーロック・ホームズは事件に対して尋常じゃないエネルギーをぶつけるし、天才的な閃きもあるんですが、肝心なヒューマニズムを持ち合わせていない。そこがシャーロック・ホームズの面白い所なのかとも思います。自分の1番近くにある”謎”=”自分の心の中”が解けないんですね。
エキセントリックな部分や偏執的な面を持ちながら事件を解決していく訳ですが、僕は彼の人物像を”ヒューマン”に寄せてみたいとも考えています。この役は演じる人間がどこにフォーカスを当てるかで、印象がガラっと変わると思うんです。
――先程までのお話とリンクしますね。苦しんで苦しんだ先に”光”が見えるという。
橋本
ああ、確かにそうですね。役者が苦しめば苦しむほどお客様は「凄いね、こんな事までやるんだ!」と喜んで下さる。『十二夜』の大千秋楽のあと二週間後に『シャーロック ホームズ2 ~ブラッディ・ゲーム~』の幕が開く訳ですが、これはなかなかない事だと思います。いや、新作でこれは大変なことです。……と、言いながら、ご覧になったお客様に「凄いね!」と言って欲しいという気持ちもあります。
役者というのは人を楽しませたい、驚かせたい、感動させたい……と観て下さった方の感情を動かしたい生き物なんですよね。それを胸に、今回の試練……と言うか、大きなやりがいのある舞台をしっかりやり遂げたいです。
――40代最後の年のビッグチャレンジですね。
橋本
いや、本当にビッグチャレンジですよ!必死でとにかくやるしかないです。『シャーロック ホームズ』という作品には思い入れもありますし、誰にも譲りたくない。マルヴォーリオもそうですが、僕は自分が演じる役に対して人一倍愛情が強いんです。音楽も難解ではありますがめちゃめちゃカッコ良いですし、聞いている人の予測がつかない方に音がボンボン飛んでいきます。1曲の中に5曲分くらいの濃さが凝縮されている感じ。それがホームズの脳内とリンクして物語が進んで行くんです。
今、楽曲を聞いているとその音がどんどん自分の体にしみこんで来るのが分かって”これはしめた”と思える段階まで来ています。難しければ難しいほどそれが解けた瞬間が面白い!そう僕が感じるという事は、ホームズの感情にリンクしていく手ごたえがかなりあるという事かと。
今回は前作と違い、よりホームズがストイックなモードになっています。曲もカッコ良いし、物語も残酷な面がありつつセクシーで美しい。色気のある作品になると思いますよ。
――最後に、今後チャレンジしてみたい役や作品がありましたら是非教えて下さい。
橋本
僕が初めてミュージカルを観て大きな衝撃を受けたのがロンドンで観劇した『ジーザス・クライスト=スーパースター』だったんです。いつかジーザスの「ゲッセマネの園」を歌いたいと思ってます。でも……うーん、やっぱり『ジキル&ハイド』でしょうか。多くの俳優にとって1つの憧れの役だと思います。人間の二面性がハッキリ表現されていて、ワイルドホーンさんの楽曲も本当に美しい。これは演じてみたいですね。
ミュージカルもどんどん新しい作品が出てきてなんて楽しい世界なんだろうと思いますし、今回シェイクスピア劇に出演させて頂き、表現というのは色々なアプローチがあるのだと実感しています。
僕を必要として与えて下さった役と向き合って、毎回その役を愛し、チャレンジ精神で臨んでいきたいですね。自分が愛している役は必ずお客様にも愛して貰えると思うんです。『十二夜』のマルヴォーリオも『シャーロック ホームズ2~ブラッディ・ゲーム~』のホームズも、どちらも最高の形でお見せしますよ!
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『十二夜』のお稽古終了後に橋本さとしさんにお話を伺いました。お稽古中は勿論、その後のインタビューでもとにかくエネルギッシュでパワフル! 飾らずオープンにお話して下さる姿に、ガイドも益々ファンになってしまいました。
大劇場でのストレートプレイやミュージカルご出演も楽しみですが、また舞台中を暴れ回る、小劇場テイストの作品でも拝見したい! そんな風に思っている観客も多い筈。”困難であればあるほど楽しい”と目を輝かせて語る橋本さんが、『十二夜』 『シャーロック ホームズ2~ブラッディ・ゲーム~』の大きな挑戦の後にどんな舞台に立って私たちを驚かせてくれるのか、楽しみに&注目したいと思います!
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『十二夜』
3月8日(日)~3月30日(月) 日生劇場 →公式HP
『シャーロックホームズ2 ブラッディ・ゲーム』
◆『シャーロック ホームズ2 ~ブラッディ・ゲーム~』(板垣恭一演出)
4月26日(日)~05月10日(日) 東京芸術劇場プレイハウス →公式HP
※東京以外の公演地、チケット料金等は公式HPでご確認下さい※