『十二夜』のマルヴォーリオは
1人で喜劇と悲劇…両方のファクターを担う人物
(撮影:演劇ガイド・上村由紀子)
橋本
おお、そんなになりますか! 『ベガーズ・オペラ』や『ジェーン・エア』に関しては再演も一緒にやらせて貰っているので、随分長い時間一緒に居るような気がします。
――先程お稽古を拝見したのですが、かなりの”濃度”を感じました。
橋本
濃いですねえ(笑)。『十二夜』は勿論喜劇なんですが、可笑しさだけではなく色々な要素が詰まった一筋縄でいかない作品だと思います。特に僕が演じるマルヴォーリオはずっと浮かれていて、一人で喜劇の部分を背負っているという所もありつつ、最後に独りぼっちになって悲劇の方に行ってしまうという役どころなので演じていて面白いですね。
――マルヴォーリオは周囲からイジられたり遊ばれたりと、これまで橋本さんが演じられてきたキャラクターとはかなり色合いが違う気がします。ジョンさんとはマルヴォーリオに付いてどんなディスカッションをされたのでしょう?
橋本
そうですね、確かにここまでイビリ倒される役は初めてです(笑)。そういう意味ではとても新鮮です。自分から何かを発するというよりも、まるでトマトや生卵の様に周囲から飛んでくる言葉をズタボロになりながら受けていく事でマルヴォーリオがより滑稽に見えるのかな、とも思います。
ジョンとは”マルヴォーリオ”についてというより”僕が演じるマルヴォーリオ”についてこれまで話をしてきました。ジョンはマルヴォーリオという役にとても深い思い入れと拘りを持ってくれていて、稽古に入る前に『十二夜』の主軸とは違うサブストーリーの部分でマルヴォーリオこそが”隠れた主役”なのだと。一人で色々な要素を持っているとても難しい役だ、と伝えられました。
「そうか、そんなに難しい役なんだ」と最初は思ったのですが、すぐに発想を切り替えて難しい=大変と捉えるのではなく、まずは素直に表現していこうと。ジョンはヒントを沢山与えてくれますので、そのヒントを全て自分の中に取り込んで稽古で見せ、徐々にナチュラルな表現をしていければと思いました。稽古中にジョンが顔を真っ赤にして笑ってくれると「よし!」ってガッツポーズになりますよ(笑)。
ジョンはユーモアのセンスも凄いので、役者が狙って狙って笑いを取りに行くと反応してくれないんですね。でも必死に突き詰めた末に出た表現が役のキャラクターとぴったり合うと凄く嬉しそうに笑ってくれて……稽古場ではジョンの笑顔を見たくって頑張っているという所もありますね。そしてそれが劇場でお客様が見せて下さる笑顔に繋がって行くんじゃないかと。
⇒ 『レ・ミゼラブル』オーディションでジョン・ケアード氏に言われた言葉とは!? (次ページ)