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なぜ日本の若者は投資しないのか?

日本経済新聞社が行った「アジア10カ国の若者調査」には興味深い内容です。5割超の若者が投資をしている国がある一方で、日本の若者で投資をしている人の割合は、アジア10カ国でもっとも少ないのです。なぜなのでしょう?その理由を掘り下げることで、私たちの課題が見えてきます。

北川 邦弘

執筆者:北川 邦弘

はじめての資産運用ガイド

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投資している若者はたった18%

アジア10カ国の若者調査によると

アジア10カ国の若者調査によると

日本経済新聞社がアジアの主要都市に住む20歳代の男女を対象に消費動向などを調べた初の「アジア10カ国の若者調査」は、考えさせられる内容でした。※調査対象は、中国、インド、インドネシア、タイ、ベトナム、フィリピン、マレーシア、シンガポール、韓国、日本。

マレーシア 、シンガポール、インドでは、都市に住む過半の若者が、投資をしています。それに比べて、日本の若者の投資している人の比率は18.5%と、格段に低い数字なのです。

なぜ、日本の若者は投資に消極的なのでしょうか?日経新聞の記事では、その理由まで踏み込んでいませんが、ガイドが想像の羽を広げてみました。日本には投資機会が少ない、社会保障ができているから、投資するほどのお金を持っていないからなどの理由が思い浮かぶのですが、納得できますか?

日本では投資機会が少ないから?

確かに、経済成長率で見れば、日本はプラス1%の上下を行ったり来たりの低成長(1991年以降の年率GDP成長率)です。それに比べて、アジアの国々のGDP成長率は、5~7%とだんぜん高いものがあります。

しかし、日本人は日本国内にしか投資できないワケでもなく、国内から海外に投資する機会は、投資信託を通して広く開かれています。国内の低成長を理由に日本の若者が投資しないという事実を正当化するのはややむずかしい。

社会保障がしっかりしているから?

公的な社会保障制度に関しては、アジアの国々はまだまだ整備の途上にあります。医療保険にしても、老後の年金にしても、まったく不十分な状況。ですから、自分の身は自分で守るしかない。アジアの若者が、将来のために投資に熱心であるのは理解できます。必要に迫られて投資をしているということです。

ひるがえって、日本の医療保険や年金制度は、欧州にもひけを取らない世界に冠たるものがあります。だから、日本人は将来の生活に不安を持っていないとアジアの若者からは見えるかもしれません。ところが、当の日本の若者たちは、日本の社会保障をまったく当てにできない、信頼できないと考えているのですから、これも投資をしない理由にはなりそうももありません。

投資するほどお金を持っていないから?

この「アジアの10カ国若者調査」によれば、日本人を上回る収入を上げている国は、シンガポール、韓国などがあり、日本の若者の月収は第3位。過去1年間に経済的余裕があった人の割合では、10カ国中の最下位に位置しています。もう日本人は、アジアの中で決してリッチとはいえないのですね。だから、お金がないので投資できないのでしょうか?

異なる統計を見ると、日本人で貯蓄をせっとしているのは、実はこの20代です。つまり、日本人の中でも、比較的資金を持つ世代であることが、国内の比較により明らかです。貯蓄するお金はあるわけですから、お金がないから投資をしないというのも、少し違うようです。

さあ、困りました。日本の若者がなぜ投資をしないのか?どの理由をとっても、説得力に欠けます。若者が投資しないホントのワケは何なのでしょうか?

個人的な仮説ですが、これは若者に限らず、日本人全体の文化だと考えられます。そう、日本人は投資に消極的な国民なのです。

投資しないのは日本人の国民性

元来、日本の中世には、清貧の思想がありました。お金にとらわれることをけがらわしいと退ける考え方です。武士道に象徴される精神主義ですね。そして、清貧の思想にダメ押しをしたのが、バブル崩壊の恐怖体験でした。

日本人はバブル崩壊で、過度な財テクに走ってはいけないということを学びました。それだけなく、貯金がイチバンという保守主義に復古したのです。なぜなら、バブル崩壊に続く20年間はデフレが続き、実際に投資などしているよりも、貯金しておくことが良かったからです。

そして、今でも、まだその後遺症から立ち直っていないと考えられます。つまり、日本の若者の示す低投資率は、日本人全体が持つマネー感覚の一端なのです。

しかし、時代は変わりつつあります。政府も日銀もインフレを目指しています。物価は確実に上がっていくでしょう。インフレで結局困るのは、国民です。生活を守るために、資産を増やしていかなければなりません。

社会全体で、健全な投資を認めていく方向にそろそろ修正しないと、投資オンチのままでは日本の未来は暗いものになってしまいます。アジアの若者を見習って、自信を持って、未来のために投資に取り組みたいものです。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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