イタリア最古のモーターサイクルメーカー
イタリア最古のオートバイメーカー『モトグッツィ』。一般的にはあまり馴染みのないブランドかもしれませんが、由緒ある伝統とともに今日までさまざまなモデルを輩出し、確固たる地位を築いてきた名門とも言える存在なのです。このV7レーサーのようなネイキッド型ストリートバイクのほか、クルーザーモデルやスポーツモデルなども手がけているモトグッツィ。ハーレー、BMW、ドゥカティといった輸入メーカーの有名どころほど普及していないため、街中でなかなか見かける機会は多くありませんが、いずれのモデルにもイタリアらしい“色気”が漂っており、ひとたび走れば、多くの人がつい目を奪われるシーンも珍しくありません。それは、バイクに詳しいツウの人だけではなく、あまりバイクに馴染みがない人でさえも、です。
現代のモトグッツィの代名詞と言えば、そのエンジン。排気量744cc / 90°空冷Vツインエンジンは、ハーレーやドゥカティと同じV型二気筒エンジンながら、設置方法がいずれのメーカーとも異なり、車体の正面から見るとVの字だと分かる、“縦置き型”という珍しいスタイルなのです。上記の写真を見ていただくと、その特徴がはっきり分かるかと思います。
Vツインエンジンの代表例を並べてみました。ハーレーダビッドソンの45°Vツインエンジン、その設置方式からVというよりはLに見えることからそう呼ばれるドゥカティのLツインエンジン、そしてモトグッツィの縦置きVツインエンジン。同じVツイン型エンジンでも、メーカーによってこれだけ違ったものになるのです。当然ながら、それぞれ挙動も違ったものになります。これは次ページからのインプレッションにて。
イギリスの伝統的スタイルに挑む
今回紹介するモトグッツィ V7レーサー。その名のとおりレーサースタイルが魅力的なモデルなのですが、ただのレーサーではなく、いわゆるカフェレーサーと呼ばれるもの。カフェレーサーとは、1960年代のイギリスで生まれたオートバイのスタイル。レース人気が高まっていた当時、24時間営業をしていたというイギリス・ロンドンのエースカフェ(現在のエースカフェロンドン)にたむろしていた若いバイク乗りたちが、「このなかで誰が一番速いか」を競おうと、カフェからカフェまでのストリートレースを催したのがはじまり。
相手よりも一秒でも速く走るため、前屈姿勢となるセパレートハンドル&バックステップ、そしてレーサー風カウルなど、本物を模したレーサースタイルがカフェレーサーとしてひとつのカルチャーを生み出したのです。このモトグッツィ V7レーサーはまさしくそのカフェレーサー。そう、歴史を持つイタリアのメーカーが、イギリスの伝統を取り入れたモデルというわけです。
このV7レーサーは、同じネイキッドタイプのカテゴリーにあるV7 STONE、V7 SPECIALの兄弟モデルにあたるわけですが、それらの2モデルよりも大幅にバージョンアップしています。エンジンは同じ排気量774cc / 空冷90°Vツインエンジンですが、200点以上のパーツを新しくして再設計、出力と燃費を大幅に向上させているのです。さらにディテールに目をやると、以前よりも高級感を増した仕様になっていることが随所に伺えます。それでいてメーカー希望小売価格が132万3000円(税込/2014年1月1日当時の設定)とは、かなりお値打ち価格。
このV7レーサーがどれほどお値打ち価格なのか、次のページにてご紹介するインプレッションとともに解説していきます。