深夜ドラマ、少し前と今
『ライアーゲーム』や『SP 警視庁警備部警護課第4係』などのように、映画化された作品も少なくありません。また、その作風が今のドラマ制作に影響を与えている作品もあります。ゴールデンタイムに比べれば、視聴率は決してよくないのですが、深夜ドラマの存在は大きいのです。■『時効警察』(2006年 テレビ朝日系列にて放送)
脱力系ドラマの魅力は複雑すぎない人間関係にあるのかもしれません。ちょっと個性的な人物は職場に必ずいるものですが、ここで描かれる人物たちは、それぞれがお互いに踏み込みすぎず、とぼけた表情が印象的ですが大人度が高い職場と言えそうです。
由紀さおりのナレーション、園子温、ケラリーノ・サンドロヴィッチなど多彩な脚本家たち、『時効警察』は深夜ドラマ史に残る1作であることは間違いありません。
■『深夜食堂』(2009年第1部がスタート TBS系列にて放送)
舞台は、できるものならなんでもつくってくれるめし屋。お店が開くのは深夜のみ。カウンター席の湯気や、薬味の匂いが画面のこちらに伝わってきそうです。音楽による気持ちの高ぶりよりも、包丁の音、水の音、食器の音など、生活音や厨房の音が、幸せな気持ちにしてくれます。
人は必ず誰かとつながり、誰かに助けられながら生きている。起承転結そのものの大きな波より小さな波に心が満たされ、日常がなんだか輝き始め、ふと笑みがこぼれます。
実は、こんなごく普通の風景を描くことが一番難しいのではないでしょうか。それをサラッとやってのけるこの作品のスタッフや俳優たちこそ、本当に素晴らしいと感じます。気取ったフルコースやスイーツより、慣れ親しんだ味を温かいうちにいただく。食事もドラマも似ているのかもしれません。暖簾といい店主(小林薫)の和服といい、藍色に心が癒されます。
深夜食堂【ディレクターズカット版】 [DVD]
■『山田孝之の東京都北区赤羽』(毎週金曜日0時52分~ テレビ東京系列にて放送)
ドキュメンタリーのようなドラマのような、枠にとらわれない新しい感覚です。俳優・山田孝之のひと夏をそのまま映像化した作品ですが、空、道、路地、風、私たちがふだん見ている風景がそのまま飛び込んでくる映像は、新鮮で心地よく感じます。カメラが日常を追う手法は、そこから視聴者のイメージを膨らませ、山田孝之の魅力を堪能したり、自分のあれやこれやを考えたり、起承転結に引きずられない新発見があるものです。この感じがさらに展開し、今までにないドラマのスタイルが確立していくといいなと、深夜ぼんやり思っています。
たまには夜更かしして深夜ドラマを見てみると、ちょっと嬉しい発見があるかもしれません。