資産運用

株式投資で1番景気が良くなったのは何県なのか?

消費動向のデータやデパートの売り上げデータなどでは、よく資産効果(金融資産などが上昇することで消費・投資などが活性化すること)の有無が言われています。通常、地方よりも都市部の方が資産効果は高いと言われますが、実際はどうだったのでしょうか?都道府県ごとの資産効果を見てみることにしましょう。

深野 康彦

執筆者:深野 康彦

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過去に株式投資で景気が良くなったのは何県?

資産効果が高い県をデータから読む

資産効果が高い県をデータから読む

消費動向の統計データ、デパートの売り上げデータなどでは、よく資産効果(株などの金融資産が上昇することで消費・投資などが活性化すること)の有無が言われています。

通常、地方よりも都市部の方が資産効果は高いと言われますが、あまり詳細なデータはお目にかかりません。そこで、今回は総務省が公表している「全国消費実態調査」を基に都道府県ごとの資産効果を見てみることにしましょう。

全国消費実態調査とは、国民生活の実態について、家計の収支及び貯蓄・負債、耐久消費財、住宅・宅地などの家計資産を総合的に調査し、全国及び地域別の世帯の消費・所得・資産にかかる水準、構造、分布などを明らかにする目的で総務省が調査しているものです。

1959年(昭和34年)に第1回調査が行われ、以来5年ごとに実施されています。2014年(平成26年)に第12回目の調査が行われましたが、その内容が公表されるのは2015年秋以降。したがって、今回検証する調査データは、2009年(平成21年)のもので、2人以上世帯のうち勤労者世帯のデータとします。

大都市圏は他の地域と比較して株式などの保有率が高いことから、株式相場の上昇による資産効果を受けやすくなっている可能性があると言われています。大都市圏だとやや抽象的なことから、今回は都道府県別に見ていきたいと思います。

調査データ項目には、株式と株式投資信託がひとくくりにされていることから、このデータを使って見ていきたいと思います。

「平成21年全国消費実態調査」2人以上世帯のうち、勤労者世帯のデータを基に作成

「平成21年全国消費実態調査」2人以上世帯のうち、勤労者世帯のデータを基に作成


東京都はベスト3にあらず

まずは、金額ベースから見ていくことにしましょう。

2人以上世帯のうち勤労者世帯では、株式・株式投資信託の保有額は全国平均で70万7000円となっています。3大都市圏では94万8000円ですから、やはり巷で言われている大都市圏の方が株式相場上昇による資産効果が高いと言えます。世帯主の年齢は共に47.5歳となっています。

ただし、都道府県別と子細に見て行くと1世帯当たりの株式・株式投資信託の保有額が全国で最も多いのは奈良県の131万7000円、2番目が岐阜県の120万1000円、3番目が神奈川県の115万円と続き、4番目が東京都の110万7000円、5番目が兵庫県の100万8000円となっています。この5つの県と都だけが100万円超えの保有額となっていますが、意外だったのは東京都、神奈川県が1位、2位ではなかったことです。

東京都、神奈川県は富裕層を中心に金融資産を保有している人が多い印象を受けますが、実際の資産運用は保守的なのかもしれません。あるいは、金融資産よりも不動産などの実物資産を保有割合が多くなっている可能性があります。

6位以下は、滋賀県の99万8000円、徳島県の87万円、千葉県の86万9000円、京都府の86万3000円、愛知県の82万2000円となっています。10位以下では、関東圏を除けば石川県、香川県の75万4000円、富山県の73万円が健闘している気がします。以前、地名に「金」という文字が入る地域は意外と投資にアレルギーは低く、お金に関する話は嫌がられないと見聞きしたことがありますが、それを裏付ける順位になっているように思えてなりません。

調査した当時の2009年(平成21年)は、既に投資信託の銀行窓販が始まって10年を経過しており、またインターネット証券が世に登場してやはり10年です。大都市圏と比較すると地方圏の方が金融機関の店舗が少ないと言う面がありますが、少しずつですが、銀行窓販、インターネット証券の登場が個人の投資行動に影響を及ぼしている気がします。

下位は、青森県の17万1000円、熊本県の19万9000円、北海道の20万2000円、鹿児島県の21万3000円、秋田県の22万3000円となっています。

保有率でも奈良県がトップ

意外と言ったら怒られるかもしれませんが、保有額で見ると資産効果が高かったのは、奈良県、岐阜県、神奈川県という順位でした。今度は、株式・株式投資信託の保有率で見てみましょう。保有率ですから、よりたくさんの人に資産効果があった地域はどこかということになります。

株式・株式投資信託の保有率が最も高いのは、やはり奈良県の27.0%、2番目は東京都の26.5%、3番目は神奈川県の23.9%、4番目は岐阜県の23.7%、5番目が滋賀県の22.3%となっています。各都道府県の人口を勘案した数値でないことから、人口を加味すれば、金額、保有率ともに奈良県が他の都道府県を圧倒するほど資産効果が高かったと言えそうです。

6位以下は、石川県の22.1%、千葉県の21.9%、三重県の21.3%、兵庫県の21.2%、岡山県の20.9%と続きます。石川県は保有額で13位の75万4000円、三重県は22位の61万4000円ですから、石川県、三重県は世帯当たりの株式・株式投資信託の保有額はあまり多くはないが、保有率が高いことから投資していることか多い。言い換えれば、たくさんの人に資産効果があったと言えそうです。

10位以下では、大都市圏を除くと香川県の19.6%、愛媛県の18.4%、富山県の18.9%が相対的に健闘している気がしてなりません。反面、大都市圏で以外に資産効果が低いと考えられるのが福岡県です。保有額では31万2000円、保有率は13.7%ですから意外と下位に甘んじているように思えてなりません。

全体的に言えるのは、東日本よりも西日本の方が株式・株式投資信託の保有額、保有率が多いように見受けられます。数は少ないものの仕事でさまざまな地方へ行かせていただきますが、資産運用(投資)の話は東日本より西日本の方が好まれ、関東から北は厳しいという言葉をよく見聞きしていますが、そのような調査結果になっていると妙に納得してしまいました。

ただ、調査は5年も前のもので、アベノミクスが始まってから調査された(平成26年秋)の結果は平成27年の秋以降に公表されると思われます。どのように変化しているのか非常に興味があるところです。

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