不妊症

久しぶりに不妊治療の新薬登場!「ルティナス腟錠」(2ページ目)

昨年12月、不妊治療においての久しぶりの新薬が出ました。しかし、年末の忙しさにその情報はほとんど世に出ていないと思います。今回上市された新薬は黄体ホルモン製剤プロゲステロン(商品名:ルティナス腟錠100mg)という製品です。

執筆者:池上 文尋

ルティナスの副作用について

ガイド:ルティナスの副作用についてお話頂けますか?

新家さん:国内臨床試験で108症例中9症例、8.3%に副作用(臨床検査値異常を含む)が認められています。主な副作用は頭痛・傾眠・性器出血が各2例となっています。

黄体ホルモン剤投与における副作用としては局所作用の大きい腟剤ということもあり、他の投与経路と比較しても、比較的少ないと考えております。

発売後の患者さんの反応

ガイド:膣投与というとなかなか心理的ハードルの高い方もおられると思いますが、発売後の患者さんの反応はいかがでしょうか?

新家さん:その点は我々も心配したのですが、おおむね良好です。専用のアプリケーターを使ってもらって自分で投与して頂くのですが、最初の2~3回で慣れて頂くと後はスムーズに使って頂けます。
medicine

薬剤投与のためのアプリケーターです。


また、アプリケータを使用すると、腟の奥まで挿入することができ、腟錠の有効成分の吸収をサポートできますし、挿入した腟錠が出てきてしまう事も防げます。さらに、指で挿入するよりも雑菌が入りにくく衛生的ですし、長い爪やネイルをされている女性も多いですが、気にせず腟剤を挿入できます。 

発売前に実施した市場調査でも、約8割の女性がアプリケータを使いたいという結果も出ていました。 発売後も多くの患者さん、看護師様からもご好評いただいています。

ルティナスの用法・用量について

ガイド:用法・用量について教えてください。

新家さん:1回1錠を、1日2~3回投与で採卵日(またはホルモン補充周期下での凍結胚移植ではエストロゲン投与により子宮内膜が十分な厚さになった時点)から最長10週間(または妊娠12週まで)腟内に投与するとなっています。

ルティナスの費用面と処方量について

ガイド:気になるのは費用面なのですが、今までの処方とどれぐらい費用差があるものでしょうか?

新家さん:費用については患者さんの処方量によって変わるので一概にどれくらいと言えないのですが、今までの負担より少し高くなるかもしれません。

しかし、今まで痛い筋肉注射を我慢しながら、連日通院されていた方の時間的な問題、身体的な問題から考えるとこちらの製品の方が何倍も価値あると言って頂けている現状もあります。

また、合成黄体ホルモン経口剤を使われている方の中にも飲んだあと気持ち悪くなる方もおられるので、そのような方の場合、体内で産生されるホルモンと同構造のプロゲステロン腟剤に切り替えて頂くことにより、副作用が軽減したというケースもあるようです。

また、未承認薬が処方された場合には、万が一健康被害が起こった際には補償を受けることができません。そういった意味でも、正式に当局から製造承認販売を受けた薬剤で治療を受ける安心感は大きいと思います。

最後に伝えておきたいこと

ガイド:最後に伝えておきたいことはありますか?

新家さん:この製品は医師の処方がないと処方して頂けない薬剤です。その点は再度、ご認識を頂く必要があります。

有効性・安全性が、日本で初めて確立されたこの製品を使ってもらう意味は、最終的に妊娠・出産までにつながってもらうことが目標ですので、いかに妊娠・出産の可能性を高くできるか、きちんとドクターと話し合って頂くことが重要と考えております。

我々としては、多くの方々の要望に応えた結果、このように日本の生殖補助医療に待ち望まれたいた薬剤を、医療従事者の皆様や患者さんにお届け出来たことは非常に喜ばしいことだと思っております。ぜひ皆さんの福音に貢献できるように今後も情報提供と薬の安定供給に努めていければと思っております。

まとめ

今回は久しぶりの新薬についての取材をしてみました。不妊治療の新薬がなぜ日本においてほとんど出てこないかというとそれだけ薬の市場が小さいから、薬を出しても開発コストがまかなえないという背景があります。

今、薬の開発コストは少なくても数十億、多ければ2~300億円ぐらいかかると言われています。日本の市場だけでは利益が出ないので、新薬も出てこない……ということになっていました。

今回は学会や患者団体の後押しがあり、優先的に認めようという動きがあっての新薬承認ということで、患者さんへのメリットを認められた形での発売になったものです。せっかくの新薬ですから、先生方には上手にご活用頂き、妊娠率向上にお役立て頂きたいと感じた次第です。

今後の不妊治療新薬の承認がよりスムーズになってくれることを願って、今回の取材記事を終えたいと思います。

取材に真摯にお答え頂きました株式会社フェリングファーマの新家さん、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

■関連サイト
フェリングファーマ

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