日本人監督が背負う使命感
2014年のJ1リーグを制したガンバ大阪を率いるのは、長谷川健太監督(49歳)である。日本人だ。2013年のJ1で頂点に立ったサンフレッチェ広島を率いたのは、森保一監督(46歳)である。森保監督のサンフレッチェは、2012年もリーグ戦を制している。J1リーグ連覇を果たした監督は、歴代4人目である。代表チームの土台は国内リーグだ。最初から外国人ありきの選考をするのは、Jリーグで仕事をしている日本人監督への、とりわけ結果を残している日本人監督へのリスペクトを欠いていると思うのである。
ヨーロッパでプレーする選手が多い日本代表には、コミュニケーションスキルの高い選手が増えている。数か国語を操る選手もいる。それでも、外国人監督には通訳が必要だ。
日本人監督は、通訳なしで会話ができる。新監督は最初の課題として「時間の無さ」に直面するが、サッカー選手としての日本人を知り、日本人のメンタリティも理解する日本人監督なら、すぐにでも具体的なチーム作りに着手できる。
外国人監督に比べると、日本人監督には経験がないと言われてきた。日本サッカー協会が日本人監督を敬遠してきた一番の理由は、「経験不足」の四文字に集約されていると言っていい。2007年末に当時のイビチャ・オシム監督が病床に伏したとき、岡田監督が後任に指名されたのはまさに経験が理由だった。彼は2度目の代表監督就任だったからだ。
しかし、2002年から06年まで代表監督を務めたジーコは、Jリーグで監督代行をした経験しかなかった。彼が国内世論の歓迎も受けて迎えられたのは、ブラジル代表としてのキャリアがあったからだった。
2018年のロシアW杯へ向けて、日本代表がまず越えるべきハードルはアジア予選である。同じ時期でも気候が異なり、時差も横たわるアジアの予選を選手として勝ち抜き、W杯に出場した元代表選手なら、十分に代表監督の資格があると僕は思う。あるいは、年代別代表を率いてアジアの予選を勝ち抜き、17歳以下や20歳以下のW杯に出場したことのある日本人監督も、候補に加えていいはずだ。
過去20会のW杯で優勝した国は、すべて自国の監督が率いた
代表監督を選任する技術委員会は、現時点でJリーグのクラブを指揮する監督にオファーをしないと明言している。Jリーグ各クラブはすでに2015年シーズンに向けて動き出しており、この時点で就任を打診されても困惑するしかないのは事実だ。しかし、ブラジルW杯で惨敗し、先のアジアカップでもベスト8に終わった日本代表は、はっきりとした停滞感、倦怠感に包まれている。そして、外国人監督にはそこまでの認識はない。持てないと言ったほうがいいだろう。
クラブの関係者とそのクラブのファン・サポーターに多大な迷惑をかけるとしても、Jリーグの現職監督を候補から外すのはもったいないと思うのだ。何度でも頭を下げ、理解を求める覚悟を、技術委員会は示すべきである。
過去20会のW杯で優勝した国は、すべて自国の監督に率いられている。準優勝国も、ふたつの例外を除いて自国の監督だ。
このデータは、何を示すのか。自分が生まれ育った国を背負う責任感と使命感こそが、代表チームを率いる何よりのエネルギーであることを証明していると思う。
外国人監督にあって日本人監督にないものは、確かにある。だが、日本人監督にあって外国人監督にはないものも、間違いなくあるのだ。