共働きの「働き分け」を考えてみる
共働きは今では当たり前のことになっていますが、「有利な共働きのルール」についてはあまり議論されていないようです。私も何度かAllAboutにコラムを書いたことがありますが、
- 夫婦が同じ会社に勤めるより違う会社のほうがリスクヘッジになる
- 違う会社で働くなら違う業種のほうがよりリスクヘッジになる
- 独立開業する場合も夫婦で一緒にがんばるより、どちらかは会社員のままのほうが安心
今回はさらに具体的に「夫がフリーで妻が会社員の組み合わせが最強かも?」という話をしてみたいと思います。あえて、女性は会社員のほうがいい、と言うわけですが、理由はちゃんと隠されているのです。
それは「子育てに有利」というキーワードです。
男性は稼げる働き方を追求すればよいが
先に夫の働き方のほうを説明してしまうと、実は男性はどんな働き方でもかまいません。「夫会社員、妻会社員」でも「夫自営業、妻会社員」でもいいと思います。男性については、もっとも稼げる働き方を選択すればいいのであって、それが正社員でもフリーランスでもいいのです。社長になってもいいし、そうでなくてもかまいません。
しいていえば、フリーランスや個人事業主のほうが正社員よりベターな点として「働く時間のコントロールがある程度きく」ということがあります。
こどもの保育園へ送り迎えをしたり、仕事は早く切り上げて買い物をしたり、日中できなかった仕事をこどもが寝静まった後にこなすような自由度は会社員にはなかなか作れません。私も基本的に朝は保育園に送る担当ですし、6時半には帰宅し寝かしつけまで担当したあと、原稿を夜中に書いたりします。普通の会社員では難しかろうと思います。
もちろん、個人事業主なら何でも自由ではありません。お店を営業すれば営業時間は拘束されたりします。それでも普通の会社員より融通は利くことでしょう。
さて、女性の場合は、「明らかに正社員のほうがいい」のですが、なぜでしょうか。
女性はできるなら会社員のほうがいい
男性の働き方は自由だ、といった一方で、「女性は正社員に限る」と限定をしています。実は女性については「子育て」というビッグイベントを想定したとき、正社員のほうが明らかにお得だからです。一番大きいのは「育休手当」でしょう。これは育児休業給付金といわれる制度で、最初の半年は休業前の賃金の3分の2相当、それ以降は2分の1の金額が復職するまで受けられるのです。これはつまり、「育休しているあいだも収入の半分以上はキープされる」ということです。
ところが、この制度は「雇用保険」に加入していた場合にもらえる仕組みです。雇用保険は会社員のように雇われている人しか入れません。「経営者」「個人事業主」「フリーランス」「アルバイトやパート」などはそもそも雇用保険の対象外なのです(週20時間以上働いている場合は、パートなど正社員以外も対象になります)。
仮に月収が24万円であれば、半年間は16万円、仮に1歳時点で復職するなら残りの半年は12万円を毎月もらえます。合計で168万円にもなります。もらえないのともらえるのとでは大違いですね。もちろん月収が高ければそれだけ手当も高くなります。
なお、産休についても、自分の健康保険証を持っている被保険者の場合、健康保険制度のほうから出産手当金として出産予定日前42日、出産後56日の間、休業前の賃金の3分の2相当がもらえます。これも正社員のメリットです。合計すると、200万円以上になることは珍しくありません。30代後半で給与が高い人はもっともらえるわけです。
さらにいえば、産休・育休期間の厚生年金保険料は本人も会社も無料で保険料を納めたことになり、将来の年金受給権もキープされます。
子育てが終われば女性の独立チャレンジもOK
「雇用保険の壁」は手当の話だけではありません。この仕組みは同時に「復職を会社に義務づける」仕組みも担っています。会社は産休や育休を理由に会社をクビにしてはいけない仕組みです。これにより、安心して育休を取ることができます。また、復職が前提となっていることで保育園にも入りやすくなります。逆にいうと子育て中のフリーランスなどは、育休手当ももらえず、仕事は中断せざるをえず、仕事を先に再開しないと保育園にも入れないという難しい状況になりがちです。
もし、子育てを視野に入れているカップルであれば、女性のキャリアアップは育休が終わってからでもよいでしょう。40代で会社を飛び出して独立したり転職をする人はたくさんいます。
むしろ育休を理由に同じ会社内でのキャリアがストップしてしまうこともあり(育休を取らない男性が追い越していく)、人事制度に不満があれば積極的に外に飛び出してみてはどうでしょうか。
個人的には、雇用保険の有無にかかわらず、子育てママには所得を補う手当が払われるべきだと思います。しかし、今のところ子育てとお金のことを考えると「雇用保険の壁」を意識した、夫婦の働き方の組み合わせを考えざるをえないのです。
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