温熱作用とは? お風呂の医学的な作用
お風呂の「温熱作用」効果によって血液が温められることで血管が広がり、全身の血の巡りが良くなります
湯船にゆっくりつかると疲れが取れ、ほかほかしてとてもいい気分になります。普段何気なく入っているお風呂ですが、うまく使うとさまざまな症状に対するセルフケアとして用いることができます。それでは、まずは体にはどのような効果があるかを見ていきましょう。
お風呂の体への効果として挙げられるのが、「温熱作用」です。温かいお湯につかると体の表面の温度が上がります。血液は体の表面近くで温められており、それが全身の血管を巡ることで体全体が温まります。そして血管が広がり、全身の血の巡りが良くなります。
そうなると、血液によって全身の隅々まで酸素や栄養分が運ばれ、体にたまっていた老廃物や二酸化炭素は体外に排出されます。つまり、新陳代謝が活発になり、体がリフレッシュするのです。お風呂に入ると疲れが取れ、すっきりするのはこうした作用によるものと考えられています。
また、体が温まると筋肉は緩み、関節の緊張が和らいでいきます。例えば、肩こりは僧帽筋(そうぼうきん)という肩や首まわりの筋肉の緊張によるものですが、お風呂にゆっくりつかると、この筋肉の緊張が和らぎ肩こりが改善します。慢性の腰痛や関節痛も同様に、痛みの緩和が期待できるでしょう。
ただ、この温熱作用、実はお湯の温度によって体への影響が変化します。42℃より高いか、低いかで体の反応が大きく変わってくるのです。
お風呂で自律神経をコントロールする方法
さて、人の体には自律神経という神経があります。この神経は作用が相反する交感神経、副交感神経の2つの神経で成り立っており、普段はこの2つの神経がちょうどシーソーのようにバランスを取って人の健康を維持しています。例えば、いわゆる「自律神経失調症」はこの神経のバランスが崩れた状態です。最近、この自律神経のコントロールは健康法としても、注目を浴びていますね。交感神経は心身をこれから狩猟にでも行くような興奮状態に、副交感神経は休憩・リラックス状態にする神経です。実はお湯の温度によって体のこの2つの神経の反応が変わってきます。
42℃以上の熱いお湯に入りますと交感神経が高ぶります。興奮状態になるため、血圧は上がり、脈は早まり、汗をかき、筋肉は硬直します。また、逆に胃腸の動きは止まってしまいます。
一方、40℃程度のぬる湯につかると、副交感神経が刺激されて心身がリラックスし、血圧は下がり、脈はゆっくり、汗もかかず、筋肉もゆるみます。胃腸は活発に動き、消化がよくなります。一概にお風呂の効果といっても、わずかなお湯の温度の違いによって体の反応は正反対に動きます。
つまり、お湯の温度によって体の反応が変わるため、場面に応じて使い分けることが重要だということです。ぬる湯は心臓など体への負担が少なく、夜寝る前にゆっくりつかることでリラックスできてよい眠りにつながります。逆に朝の仕事前に、熱めのお風呂やシャワーをさっと浴びる、というのは身も心もシャキッとして理にかなっています。
自律神経のコントロール法は他にもヨガや呼吸法などさまざまな方法がありますが、お風呂の湯の温度を変えることは訓練もいらず指一本ですぐにできるのでとても簡単な方法です。目的に合わせてお風呂やシャワーのお湯の温度を使い分けてみましょう。