こうしたアート作品を多く手がけるplaplax(プラプラックス)さんに、メディアアートの作品のありかたを伺います。
メディアアート作品の一例~plaplaxさんの場合
―――まず、plaplaxさんの作品について教えてください。
plaplax 例えば右の「クラムボンはわらった」は、人が伝声管に向かって話しかけるとそれが泡となって水の中に現れます。他にも人の動きによって映像が変化する作品や、香水をつけた紙片をセンサーにかざすと匂いの強さや種類に応じた花が咲く作品「hanahanahana」など、人が関わって初めて内容がわかるような作品を作っています。
――確かにplaplaxさんが手がけている作品は、ただ「見る」だけでなく、「参加して楽しむことができる」ことが特徴ですよね。この作品「石ころのカチナ」も、そうですね。
plaplax テーブルの上に石ころが置いてあるだけに見えるのですが、どこにでも転がっている当たり前の石ころと思って「触る」と、思いがけないことが起こります。
――思いがけないこと、とは?
plaplax 石ころを触ると、テーブルの上にさまざまな精霊(カチナ)のようなものが現れてくるのです。 こうした作品の仕組みをつくるときには、鑑賞者の動作や環境を認識する様々なセンサー(インプット)、映像機器やモーターなどの動く機構(アウトプット)、そしてそれらを制御して動作させるコンピューターを組み合わせて、システムを構成していきます。
石に触れたことを検知できるタッチセンサー、検知した信号を受けてアニメーションを動作させるプログラムを書き込んだパソコンやマイコン、石の下から精霊のようなものが現れてくるかのように映像を投影するプロジェクターをテーブルにセットしています。
――すごいつくりなんですね。
plaplax 私たちはその仕組みを見せたいのではありません。いつもは気にかけなかった石ころをよく見るようになったり、手で感触を確かめたり、石ころから想像を膨らますことができるようになるのではないか、と考えています。
――そこまで考えられていると、美術館で展覧会だけでなく、いろんな活動の幅がありそうです。
plaplax 最近ではNHK Eテレで放送中の「デザインあ」という番組のコーナーを企画して映像をつくったり、こども病院の空間演出をしたり、自動車メーカーと未来の車をデザインするというような仕事もさせて頂いています。
――もはやアートというより、どれもすごそうな仕事です。
plaplax 「メディアアート」で培われた、メディアそのものについてその意味や可能性を追求するという思考方法は、美術展で作品を展示する以外にも、企業と一緒にプロトタイプを作ったり、建築家と一緒に建物の中の機能を考えていったり、さまざまなイベントを企画する際にも、とても役立ちます。
「メディアアート」の分野では私達のようにグループで作品を作る人も多く、参加しているクリエイターのバックグラウンドもさまざまなので、分野を越えるようなコラボレーションは得意かもしれません。また、体験型の作品を作る時には、アートや技術に詳しくない人にも作品に関わってもらうためにはどうしたら良いのか常に考えているため、人の行動についての観察や分析からプロダクト(製品)や空間をつくったりする場合にも活かせるのではないかと思っています。