妊娠中はセックスしないが約半数
妊娠中のセックスについての複数の調査で、「妊娠中はセックスをしなかった」という回答が約半数に上っているようです。「赤ちゃんへの影響が怖い」など、胎児への配慮が理由のトップですが、女性のほうが「したくなくなった」という理由も目に付きます。一方、妻が妊娠したからといって夫の体には特段の変化もありません。胎児への影響を考えることが理由にせよ、妊婦さんの性欲減退が理由にせよ、夫にとっては結婚以来はじめての禁欲生活を体験することになるわけです。
雑誌のアンケート企画などでは、「妊娠中でこちらはそんな気になれないのに、セックスを求められてうっとうしい」という妊婦さんのコメントを目にすることも多くあります。おなかが張りやすくなる、感染症のリスクが怖いなど、セックスの行為そのものに対する慎重論があるのはわかります。だからといって、夫が妻にスキンシップを求めるというごく自然な行為を「うっとうしい」と表現してしまうと、話がこじれてきます。
そのような表現が飛び出すとき、妊婦さんの側に「夫がセックスを求めてくるのは性欲を抑えられないから、体が目当てだから」的な発想をしていることがあるのではないかと思います。しかし、セックスは挿入や射精を目的としているものではないはずです。特に夫婦においてのセックスは、「絶対的に相手を受け入れる愛情の交換」であるはずです。
夫婦のセックスにつきまとうジレンマ
妊婦さんがセックスをしたくなくなる気持ちはもっともです。しかし、「うっとうしい!」などと言われてしまっては、男性だって傷付き、妻を誘うことに恐怖すら感じるようになりますよね。逆もしかりです。妊娠期間中に「しない」ことが当たり前になってしまい、産後「もうそろそろ」という時期になってもなかなかセックスを再開できないカップルが多いのには、そんな理由も多いようです。セックスをするかしないかは個人の自由。しかし一度夫婦となれば、セックスの相手はこの世の中にたった一人。その人からセックスを拒絶されるということは、「セックスなしの世界」に生きなければならないということです。
繰り返します。セックスを「する・しない」を選ぶのは夫婦それぞれの自由です。しかしその選択の結果に相手を従わせる権利はお互いに持っていないのです。これは夫婦のセックスにつきまとうジレンマです。
このジレンマをどうしたらいいものか。ポイントは、挿入や射精という行為・現象に意識を向けるのではなく、お互いの気持ちを受け取り合うことに意識を向けることです。
「したい気持ち」「したくない気持ち」をそれぞれ受け取ったうえで、セックスの挿入行為の代わりに一緒にお風呂に入って体を洗い合うとか、ちょっと刺激的なマッサージをしてみるとか、高密度なスキンシップをとるようにすれば、お互いに気持ちが満たされて、今まで以上に愛情を感じられるようになるでしょう。妊娠期間中には妊娠期間中なりの性生活の楽しみ方があるはずです。
妊娠中・産後の性生活は、長い夫婦生活の試金石
一般に「性交が1カ月以上ない状態をセックスレスという」という解釈が広まっていますが、産後にセックスレスになるカップルは非常に多いようです。医学的には産後1~2カ月もすればセックスは再開できると言われています。実際にその時期にセックスを再開するというカップルが約半数であることを過去に行われた多くのデータが示しています。しかし、一方で半年たっても一年たっても再開できないカップルも多いようです。いわゆる「産後セックスレス」というものです。産後セックスレスは妊娠期間中にまったくセックスをしなかったカップルに多く、そのまま長期にわたってセックスレスの状態が続くことがあるようです。
産後セックスレスの原因には女性側から「痛い」「体形が崩れたのが恥ずかしい」「母乳を出しているので恥ずかしい」「性欲が湧かない」という理由が挙げられています。一方、男性側の理由は「色気を感じなくなった」「セックスをしない生活に慣れてしまった」などという理由が挙げられています。
妊娠期間中と同様に、セックスは重要なスキンシップ、愛情交換であることを忘れずに、できる範囲でのスキンシップ、愛情交換をしていれば、セックスの再開の時期も早まると考えられます。
妊娠中・産後のセックスは心のつながりを大事にする「本当のセックス」に目覚めるチャンス