薪ストーブの特徴を知り、効果的な家を建てる
薪ストーブを効果的に使うために、その暖房機能の特徴を知っておくことが大切です。「東京ストーブ」の店舗にはバーモントキャスティングスの大きな薪ストーブに火がいれられていました。勾配天井にはシーリングファンがゆっくりまわっています。部屋全体が暖かいのはもちろん、薪ストーブの前に立つと、じんわり体の芯から温まる感じ。「薪ストーブはエアコンのように風をおこさずに部屋を暖めるのが特徴です」というように、放射でモノを暖めるので、室内に気流を発生させません。輻射熱は空気でなくモノを直接あたためるということで、人の体はもちろん柱や壁、床などもあたためます。ちなみにログハウスには薪ストーブがつきもの。木は蓄熱性能が高く、一度温まると冷めにくく保温効果が長く持続するという性質を持っているので、蓄熱性の高いログ(丸太)と放射熱を発する薪ストーブはとても相性がよく、理にかなった組み合わせなのです。
一方、リモコンスイッチひとつで起動するエアコンは対流による暖房機。暖めた空気を掃き出し口から下に向けて放出しますが、暖かい空気は上部にあがり、足元はなかなか暖まりません。壁や床も温まらないので、ドアを開けると外に暖気が逃げてしまいます。またエアコンの風が苦手という人も多いのですが、気流により埃を舞い上げ、空気も乾燥しがちです。
以上のように暖房機にはあたため方の違いがあり、薪ストーブは周囲のものを暖めるというのが大きな特徴です。この特徴を生かすには、間取りとしては間仕切りを少なくするのがポイント。吹抜けや階段を設けることで1階の暖気は2階へつながり、間仕切りがないことで家全体があたたまります。
「次に薪ストーブをどこに置くかですが、それは使い方にもよります」と松田さん。通常、寒冷地の別荘などではメインの暖房機として一日中薪を焚くので、吹抜けの下に置くのが効果的。一方、昼間は使わず夜だけ火を使う、短時間でリビングを早く暖めたい場合もあります。そういう使い方の場合は、吹抜けでない天井の下に置いて早めに部屋をあたため、階段から2階に熱が逃げていくようにしたほうが効果的なようです。
薪ストーブを後付する場合はエントツに注意
中古別荘を買ったので、薪ストーブをつけたいという人も多いのではないでしょうか。松田さんに伺うと、「つけたいところに設置できない場合はありますが、だいたい後付できます」と期待できる返事が返ってきました。まず大切なのは、薪ストーブにはエントツが必須。エントツを通すために45センチ四方の穴を開ける必要があります。木造であれ、鉄骨であれ構造的なものを避けてこの穴を開けられるスペースがあれば薪ストーブの設置か可能です。ただし、エントツはできるだけまっすぐに立てたいので、なるべく曲りが少なくできる場所を選び、そのエントツの下に薪ストーブを置くことになります。
またエントツからは多少であれ煙が出ます。お隣の関係も考えなくてはなりません。洗濯物干場のあたりはダメでしょう。というわけで、後付の場合は専門家に家を見てもらうのが無難です。設置できる場合は炉壁を造る素材にもよりますが、工事期間は平均3日くらいとのことです。
薪ストーブのメンテナンスは年1回
薪ストーブのデザインは昔からそんなに変わっているように思いませんが、タイプでいうなら暖房だけのもの、料理ができるもの、炎を楽しめるものの3つに分けられます。ゆらぐ炎を楽しむためにガラス面が大きく確保されているものは、部屋のインテリアとしてもデザイン性が高く感じられます。
薪ストーブでもうひとつ知っておきたいのがメンテナンスです。薪を燃やすと煤(すす)が出ます。煤がエントツの中にたまると、煙の抜けが悪くなり部屋のなかに煙が入ってくる、煤がエントツの中で燃えるなどの不具合が生まれます。
「最近は煤の量は少なくなっていますが、年に1回くらいはエントツ掃除をして煤をとると長く快適に使えます」とのこと。自分でできそうにない人は施工会社に頼むのが便利です。ちなみに「東京ストーブ」の場合、1回2万円でお願いできます。
薪割りに使う斧やチェーンソーなどもあります。実際に持つとどっしり重量感がありますが、最近は女性自ら薪割りする人もいるのです
最近は子どもと一緒に薪を割る作業を楽しみにされている人も多いようです。
「東京ストーブ」ではストーブクッキングや薪割りの講習会を実施しているので、参加してみるのがおススメです。また年に1回は八王子方面の山に出かけて木の伐採ツアーも実施されているとか。切った木を持ち帰り、乾燥させて薪にする。そんな地産地消のスローライフも経験してみたいもの。
「ゆれる炎を見ながら飲む酒はおいしいよ」「ことこと煮込むシチューがおいしくて……」などうらやましい購入者の言葉も聞かせていただき、ああ~薪ストーブの前でごろ寝したい! お酒も飲みたいなど、炎のある暮らしにさらに憧れを強くした取材でした。