地元民が持つ強国への不信感
外国人の処刑など残虐性があるイスラム国だが、地元住民から一定の支持を集めているとも言われる。それは現地の人々が持つ、欧州の強国に対する根本的な不信感が元になっていると言える。イスラム国が領土とする領域はイラクとシリアにまたがるが、ここはかつてオスマン帝国という一つの国であった。
オスマン帝国は第一次大戦で敗れ、解体されるが、その後フランスとイギリスによって国土が分割され、フランスが現在のシリア地方を、イギリスが現在のイラク地方を取ることになる。
この地域の国境線が幾何学的な形となっているのはそうした事情からだ。
イスラム国が領土と主張しているのは、かつてのオスマン帝国の領域と重なるもので、欧州の強国によって無理矢理分割された国土を再び取り戻すという点で、地元民のカタルシスとなっている可能性は十分考えられる。
分かり合えないなら一度立ち止まるという選択肢
一度こじれてしまった関係を修復するのは難しい。個人間でさえそうなのだから、文化も伝統も宗教も異なる国家間であればなおさらだ。過激な行為も行うイスラム国に対し、米国は攻撃も辞さないとも噂されているが、今こそ教訓にすべきはイラク戦争の過ちだ。
米国がイラク戦争を起こした際、最大の根拠とされた大量破壊兵器が全く存在しなかったことが後に明らかになった。これは米国にとっては悲劇で済むかもしれないが、イラクにとっては米国によって引き起こされた一方的なテロ行為に他ならない。
こんな過ちは二度と犯してはならない。
国際紛争を解決する方法に正解などない。イスラム国への対応も大変難しい問題だが、わかりあうことが困難な時こそ一度立ち止まるという選択肢も必要だろう。