介護

生活に満足している人ほど要介護状態になりにくい?

介護予防は高齢者にのみ課された問題ではなく、若い世代から関心を持って取り組んでいく「ゼロ次予防」が大切です。介護予防でも「三つ子の魂、百まで」。今回は、ゼロ次予防を考えていく上で重要なキーワードとなる「主観的幸福感」について考えます。

執筆者:中山 奈保子

若い世代が「介護予防」に関心を持つためにすべきことは

若い世代が「介護予防」に関心を持つためにすべきことは

いわゆるベビーブームに出生した世代が75歳以上に到達することにより、社会保障費の増大や介護の担い手不足を中心とした議論がされる「2025年問題」。その解決策の一つとして高齢者の要介護状態を可能な限り防ぐ(遅らせる)ための「介護予防」の取り組みが、全国各地でさかんに行われるようになってきました。

しかしながら、現在行われている介護予防事業は、ごく近い将来に要介護状態となる可能性の高い高齢者を対象としているものがほとんどであり、高齢に至るまでの若い世代が行う「ゼロ次予防」についてはあまり関心が持たれておらず、具体的な取り組みがなされていないのが現状です。

介護予防では、パワーだけではなくメンタルの強さも重要

ゼロ次予防のうち、生活習慣病の予防についてはだいぶ普及が進んでいますが、こうした疾病予防以外にも要介護状態を引き起こす背景が最近の調査で明らかになってきました。

介護予防では、単に身体を鍛えることだけではなく、一人一人が主体性を維持していくことが最も重要であり、その土台は幼少から老後に至るまでの生活歴と深く関連しています。その指標として、高齢者における主観的幸福感と内的・外的統制感が挙げられます。

居場所や役割、目標を持っているほど健康で長生き?

「主観的幸福感」とは、自分自身の健康状態や家庭環境、将来の見通しなど、今ある生活全般の満足度を表し、高齢者の暮らしや健康状態に与える影響が大きいとされています。介護予防の分野においても重要な要素と言われており、身体機能や栄養状態、閉じこもり傾向の改善が必要とされる要介護高齢者では主観的幸福感が低く、うつ状態にある高齢者の割合が非常に高いことがわかっています。

では、高齢者の主観的幸福感にはどのような背景が関わっているのでしょうか。主観的幸福感の高い高齢者の特徴について、いくつかの傾向が示唆されています。

  1. ストレス処理能力が高い
    自分の置かれている状況を把握し、自力または他人の力を借りながらも困難を乗り越えることができるという感覚が強い人ほど、主観的幸福感も高く、活動範囲を広く持つ傾向にあるようです。
     
  2. 余暇時間の過ごし方が充実している
    趣味活動は、様々な面で喪失体験を得やすい高齢者にとって、無力感や老後の不安を軽減させる力があると言われており、主観的幸福感にも影響を与えます。
     
  3. 自分の居場所や仲間を持っている
    主観的幸福感の高い高齢者においては、高齢を理由にサポートを受ける側になるだけではなく、何らかの形で「誰かの役に立っている」と感じることのできる居場所や仲間を多く持っています。例えば、地域の清掃ボランティアに参加していたり、孫の世話をするなども含まれます。身近な友人に愚痴を聞いてもらったり、逆に相談を受けたりという関係性も大切な時間です。

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