人間力
続いて、人気、勢いを測るバロメーターとして、人間力を挙げる。これこそ、バンドの人気を大きく左右する。
AvelCain
名古屋を拠点に活動している若手バンドAvelCainは、昨年、童謡をテーマにおどろおどろしさといった独特の世界観を3部作にしてリリース。インストアイベントなど、ステージを降りた場でも徹底した世界観を貫き、ファンを魅了してきた。そんな彼らだが、時にVo.業-karma-はファンに向けて惜しみない深い愛情もたっぷりと歌詞に込めて綴る。また、SNSに見られる彼らの整った美しい文章から、言葉を大切に扱う誠実な姿勢がひしと伝わってくる。音楽以前に彼ら自身に備わっている人間性もファンを惹きつけている要因となっているだろう。
その他、人間力にはどのようなものが含まれるかを具体的に挙げてみたい。
アルルカン
言うまでもなく、人気バンドの必要不可欠な条件。
[2015年注目バンド]アルルカン
昨年、始動から1年というスピードでTSUTAYA O-WESTでのワンマンライブをソールドアウト。ライブ当日、観客に向けて一足先に新曲を披露。また、それを無料配布音源として、終演後にプレゼントすることを、突如ライブMC中に発表した。そのサプライズにファンからは大きな歓声。そんなところにも、観客に媚びるのではなく、きちんとリーダーシップを取る彼らの一貫した姿勢が見られた。通常、無料配布音源はライブ来場特典としてチケットの販売と共に、予めその配布を予告している場合が多い。しかし、彼らはそれを集客のための駆け引きのツールとして用いるのではなく、ソールドアウトしてくれたファンへの感謝の気持ちとして贈ったのだ。その出来事は、会場に足を運んだファンの気持ちをグッと掴んだことだろう。
FEST VAINQUEUR
バンドの雰囲気の良さ、仲の良さというのは、活動を行なう上でバンドにとって大事なだけでなく、見る側にもそれはひとつの魅力として映る。
知らない他人同士の集まる会社の組織とは異なり、一緒に働くパートナーを自分で選択することのできるバンド。それもあって、ほとんどのバンドはひとつの志を共有し、温和に活動している。とはいえ、生まれも育ちも異なる個人が大人になってから集まった集団。また、活動していく中ですれ違いを免れず、脱退解散に至るケースも少なくない。バンドメンバーいわく、最近では、3年バンドが継続すれば「すごいね」「長いね」と言われるとか。そこで、独断と偏見だが、『この先、メンバーチェンジはないだろう』と揺るがない絆を見せているバンドの要因を考察したい。
◇兄弟、幼馴染、旧友同士がメンバーとなり集まったバンド
昔から知っている間柄には、互いを許容できる強い信頼関係が構築されている。そこからバンドメンバーという関係に変わった時、活動において大きく効果を発揮。
[2015年注目バンド] FEST VAINQUEUR
美しいメロディーラインと抜群の演奏力でぐんぐんと動員を伸ばし、2015年の活躍にも期待がかかる。そして、音楽性の他に、ファンのみならず、多くの関係者も太鼓判を押す長けた人柄も彼らの良さのひとつである。大きな団結力を持って、大阪から全国へと、地元愛に溢れた活動を展開中。中学生時代から一緒に過ごしてきたメンバーもおり、誰にも越えることのできない揺るがない強い絆が、バンドを成功へと導いていると言えるだろう。
2nd awake
一概に地方をひとくくりにして言えないが、彼らが地元を離れ活動をしても、変わらない底知れぬ団結力の強さを伺える場合が多い。以前、地方を拠点に活動しているあるバンドにその絆の秘訣について尋ねたところ、地方では東京のバンドに比べてメンバーの引き抜きといった誘惑のないこと、そもそも、バンドが無数に存在する東京と異なり、同じシーンでバンドを行なっている者同士、互いの存在を認識していたりと、仮に新しくバンドを組もうともお互いにお互いしかいない状況とのこと。かえってそうした環境が、色濃い音楽性を生み出すと共に、長寿バンドに育てているのかもしれない。
[2015年注目バンド] 2nd awake
北海道で絶大な支持を得ている彼らは昨年、地元のファンに惜しまれながら上京。北海道からいち早く、サイバー感に満ちた洗練されたサウンドを発信。対して、ライブでは人間味溢れる熱いライブで、初めて観る観客をも容易に虜にしていく。その成果が早くも現れ、今年1月16日(金)池袋EDGEにて初主催ライブの開催が決定。これが生涯のバンドメンバーであり、今後、メンバーチェンジを行なわないことを公言している彼ら。ステージを離れたプライベートでも仲の良い彼らの生み出す一体となったサウンドに注目。秘めた野心がどう爆発するか今後が楽しみだ。
>>次ページでは、バンドを支える3つ目の力と2015年の傾向を分析。
