骨・筋肉・関節の病気

環椎骨折の症状・診断・治療

環椎骨折は、頚椎の一番上の骨である環椎に直接もしくは間接的に外力が働き受傷し、事故、運動、日常生活の中などで発生します。診断はX線、CTにより確定します。治療としては、保存治療と手術治療の2つがあります。予後は比較的良好ですので、早期に専門医を受診してください。

井上 義治

執筆者:井上 義治

形成外科医 / 皮膚・爪・髪の病気ガイド

環椎骨折とは

環椎とは7つある頚椎の一番上、頭に近い第1頚椎のことです。この骨の骨折を環椎骨折と呼びます。珍しい骨折の一つです。

環椎

環椎は頭蓋骨の下、頚椎の中の一番上にある骨です。



通常は頭に強い力が働く、飛び込みなどの事故で発生します。若年者では、転落事故、交通事故などでの受傷もあります。高齢者では骨粗鬆症などが原因となり、転倒などの軽微な力での骨折が増えています。

環椎骨折の年齢、性差

運動、事故などに伴い発生する骨折ですので、あらゆる年齢層に発生します。高齢者に比較的多い骨折です。

環椎骨折の症状

骨折した部位の腫脹、疼痛、変形です。通常初期から激痛となることが多いです。

環椎骨折の診断

■単純X線
単純X線写真は放射線被爆量も少なく、費用もわずか。その場で撮影も終了し当日説明を受けられるので、整形外科では必ず施行します。

X線

頚椎単純X線像。骨折が認められます。


上記の写真は頚椎単純X線側面の写真。環椎に骨折が認められます。

■CT
単純X線で診断がつかない場合でもCTであれば診断可能です。

■3DCT
CT画像をコンピューターで計算して、3次元画像を表示することが可能です。

3DCT

3DCT像。よりリアルに3次元画像が表示可能です。



環椎骨折の治療法

環椎骨折の治療として保存療法、手術療法の2つの治療法があります。

■保存治療
初期治療としてネックカラー、ハローベストなどの固定を行う保存治療をまず行います。状態がよければ、このまま時間をかけて骨折した部位の骨癒合を計ります。長期間の固定が必要となりますので、運動、仕事の制限があります。
小児の骨折では保存治療が選択されます。

  • ネックカラー
ソフトカラー

ソフトカラーという柔らかい装具です。

ハードカラー

ハードカラーという固い装具もあります。

  • ハローベスト
ハローベスト

ハローベストという装具です。頭蓋骨に金属のネジを打ち金属製の輪を胴体のベストと接続します。



●鎮痛薬
ボルタレン、ロキソニンなど非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAIDと省略されます)を用います。

  • ボルタレン
    1錠15.3円で1日3回食後に服用。副作用は胃部不快感、浮腫、発疹、ショック、消化管潰瘍、再生不良性 貧血、皮膚粘膜眼症候群、急性 腎不全、ネフローゼ、重症喘息発作(アスピリン喘息)、間質性肺炎、うっ血性心不全、心筋梗塞、無菌性髄膜炎、肝障害、ライ症候群など重症な脳障害、横紋 筋融解症、脳血管障害胃炎。
  • ロキソニン
    1錠22.3円で1日3回食後に服用。副作用はボルタレンと同様です。

どちらの薬でも胃潰瘍を合併することがありますので、胃薬、抗潰瘍薬などと一緒に処方されます。

■手術治療
骨片が多数あるもの、骨欠損があるもの、靱帯断裂などで整復した骨片の位置が正常な位置関係にない場合、保存治療で癒合しない場合などが手術の対象となります。珍しい骨折ですので、手術療法がよいのか保存療法がよいのかの決定的な診断が難しい場合があります。


環椎骨折の予後

保存療法であっても、手術療法であっても、環椎骨折の予後は比較的良好です。早期に整形外科専門医を受診してください。
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