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2014年ドラマベスト5:同門対決を分けたのは戦争(2ページ目)

年末恒例企画、今年のドラマベスト5。勧善懲悪、不倫、難病などならぶ中、トップ争いの決め手は戦争の描き方でした。

黒田 昭彦

執筆者:黒田 昭彦

ドラマガイド


3位『僕のいた時間』

1964年に『愛と死をみつめて』が大ヒットしてから50年。難病ものはドラマの一つの定番でした。
『僕のいた時間』も未だ治療法のない難病、ALSを扱ったものですがこれまでの難病ものとは違いました。発病から進行、つけると延命できるが声が出せなくなり介護も大変になる人工呼吸器をつけるかどうかという決断を経て、まぶたの筋肉でパソコン動かして会話する状態に進行するまでをリアルに描いています。
主演の三浦春馬自身がALSをドラマにしたいと持ち込んだ企画、日本ALS協会などを含めてドラマ関係者が一丸となってALSを知ってもらおうという熱意を感じます。
裏番組の『明日ママがいない』が児童養護関係者からの批判が多かったのとは好対照。

ただ視聴率は今ひとつ。数カ月後には「アイスチャレンジ」が盛り上がったので、これとタイミングが重なればヒットしたのにと惜しまれます。

 

2位『昨夜のカレー、明日のパン』

昨年度本屋大賞2位の木皿泉の原作を自らドラマ化。
7年前に一樹(星野源)を亡くし、そのことを引きずる血の繋がらないヨメの徹子(仲里依紗)とギフの連太郎が二人で暮らしているが、さまざまな人とのふれあいにより気持ちがとけていく姿を描きます。

笑えない元客室乗務員(ミムラ)、顔面神経痛で真剣な場面でもつい笑ってしまい医者ができないサカイ君(福士誠治)などほとんどの登場人物はなにかしらの問題を抱えています。
一樹や連太郎の亡き妻(美保純)の幽霊も登場するなど生きている人と死んだ人が近いところにいるところにいるところが特徴的で、震災後を寓話的に描いています。

演技面で見どころは主演の仲里依紗。並行して出演の『きょうは会社休みます。』ではイマドキな女性社員を演じ、こちらでも同じく女性社員で同様にイマドキのようでいて、古風な面を合わせ持つ女性を演じ、演技の幅広さを見せました。

これを見ていると木皿泉脚本の朝ドラを見たくなります。遅筆らしいので難しいでしょうが。

 

 

1位『ごちそうさん』

今年も絶好調の朝ドラ。一位は『ごちそうさん』か『花子とアン』どちらかで悩みました。コンスタントによかった『ごちそうさん』か、蓮子(仲間由紀恵)の駆け落ちシーンでの「愛の讃歌」など当たるとデカい『花子とアン』か?

ガイドは『ごちそうさん』を取りました。選択のポイントは戦争の描き方。夫が職業軍人だった朝ドラパターンの祖『おはなはん』以来、朝ドラヒロインは戦争に対して批判的なのが定番です。
ところが『ごちそうさん』ヒロインのめ以子(杏)は最初は戦争に前のめりでした。しかし軍需により大事なものが失われることに気がついて考えを変えます。最初はのっていた反動か、次男が料理修行のため海軍の主計兵を志願して戦死した時の落ち込み方もより激しかったように思います。
『花子とアン』では実在の村岡花子は文学者として戦争推進に積極的だったといわれています。それに対して劇中の花子(吉高由里子)はラジオ番組「コドモの時間」を軍事色が強まったのに疑問を感じ降板。それでも蓮子からは非難されますが、描き方がマイルドになっています。

ヒロインが戦争に批判的なのは我々が過去の歴史を知っている反映です。そうじゃない当時の人の気持ちに近いであろう『ごちそうさん』の描き方の新しさを評価しました。

 

2013年の大ヒットドラマは『あまちゃん』と『半沢直樹』の戦いでしたが、今年は朝ドラ二作の独走でした。来年は民放の連続ドラマの巻き返しを期待しましょう。

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