反骨の人
デビュー早々を除くと4作、それも主演のみだった高倉健さんに比べると菅原文太さんは主演助演取り混ぜて50作ほどあります。その中で代表作といえば初主演作大河ドラマ、80年の『獅子の時代』でしょう。『獅子の時代』は会津藩出身の平沼銑次(菅原文太)と薩摩藩から明治政府官僚となった苅谷嘉顕(加藤剛)のダブル主人公で明治維新を表裏から描いた作品。
幕府と薩摩藩がそれぞれ出展したパリの万国博覧会で二人は出会い、帰国すると戊辰戦争前夜で敵味方に。平沼銑次はその後も五稜郭の函館戦争を戦い、佐賀の乱、西南の役といった士族の反乱に関わり、最後は自由民権運動に身を投じ秩父困民党事件で銃弾を浴びながら消えて行くと、幕末から明治初期にかけて徹底的に負けている側につきます。
巨匠・山田太一脚本による、史上最もラジカルな大河ドラマ。俳優以外でも反骨精神で様々な社会活動をしていた菅原文太さんのテレビドラマの代表作としてふさわしいでしょう。
カルト作品も
菅原文太さん主演で異色作は民放初主演作、81年の『警視庁殺人課』。東映がアクションと火薬使用量で『西部警察』に対抗した刑事ドラマでしたが、受け入れられず途中から人情ものに路線変更したあげく打ち切り。最終回サブタイトルは「警視庁殺人課全員殉職!」。当時『太陽にほえろ!』で刑事の殉職が人気だったとはいえ、タイトル通り全員殉職させるヤケクソさがたまらないカルト作品です。
菅原文太さんはその後も『輝きたいの』『高原へいらっしゃい』リメイク版など山田太一作品に出演。高倉健さんも映画『冬の華』に出演するなど倉本脚本を信頼していたそうです。大俳優二人を納得させるのはやはりテレビドラマの巨匠二人だということでしょう。