注文住宅/家づくりを始める前に・心構え・トレンド

愛着がうまれる家をつくる(2ページ目)

家を建てようと考えた時、ただ流行のデザインや最新の設備、キズの付きにくい床材、汚れの付きにくい壁紙などの新建材を使う。たしかに生活は豊かになるかも知れませんが、それでは本当の意味で愛着のもてる家にはならないでしょう。

佐川 旭

執筆者:佐川 旭

家を建てるガイド


住足りて礼節を知る

客間は無駄なスペースではない?
「衣食足りて礼節を知る」ということわざがあります。人は生活に余裕ができて初めて礼儀や節度をわきまえられるようになるという意味です。残念ながら「住足りて礼節を知る」ということわざはありません。

しかし、かつての日本建築に客間や応接室があったのは、ある意味守られた空間の疑似社会で躾を学んでいたのです。戦後の生活スタイルの変化により、あまり使われなくなった空間ということで、客室や応接室は姿を消しつつありますが、けっして無駄な空間ではないのです。

●障子はなぜ壊れやすい?
数寄屋建築に代表される障子をみると細い木材と薄い紙の組み合わせでとても無防備なデザインといえます。大きな棧組にただ紙を張っただけのもので簡単に破くことができます。

しかし壊れやすく破れやすくすることで、戸の開け閉めに作法がうまれ、それが最終的な形になったのが茶道なのです。無防備なデザインだからこそやさしさのある振る舞いが求められ、それがやがては文化や芸術にもなるのです。

ひと手間かけることで愛着が生まれる

私達はこれまで一般に材料の優劣を論ずる時にそれぞれの性質の中からいくつかの特性を引き出して検討してきました。そしてどちらかといえば物理的、科学的な試験を行いその成績によって良し悪しの判断をしてきました。

しかしこれからは単にそれだけの判断だけでなく、メッセージを込めたデザインや躾をつくるデザインなど感性を意識したデザインを仕掛けることが重要なのです。

キズが付きにくい、汚れがつかない、新建材だけの家づくりは愛着のうまれにくい家になってしまいます。家は多少メンテナンスをしながら手を入れることで愛着がうまれてくるのです。

●ひと手間をかけた例
障子の中央が扉のようになっていて、開けるとガラスだけとなり光が差し込む (右の写真が開放時)

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 ひと手間をかけた障子のデザイン


●元の家の部材を再利用した例
明治45年4月11日に建てられた古い家の梁を、新しい家の玄関の飾り柱として利用。次世代へその家の歴史を感じさせている。
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メッセージを込められた梁を柱に再利用 (設計:佐川旭建築研究所)

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