大阪府では15年以上続いたアートプログラムが廃止に
かつて大阪府は「大阪府立現代美術センター」を運営していました。作品展示をするスペースだけでなく、大阪府が選んだ日本人アーティストを海外へ、また海外のアーティストを大阪府へ、という交換プログラム「ART-EX」を行っていました。「ART-EX」で派遣されたアーティストは現地で制作をし、展覧会も開催します。展覧会を行うためのチラシや滞在の記録集もつくることもありました。すべて大阪府の文化政策があってこそ。日本人アーティストも海外のアーティストも、ステップアップができる貴重な機会でした。
過去ART-EXに参加したアーティストの記録集の表紙および展示風景掲載ページ
「なんとか約束された期間まではベルギーに滞在し、制作に励むことができました。しかし日本に戻って来たとき、担当者は異動、センターの存続もあやしい状態に。私が展覧会を開くことはできませんでした」と語る木村さん。現地で映像作品をつくった彼女は、結局YouTubeに作品をアップするしかありませんでした。
その後、大阪府は「大阪府立現代美術センター」も閉鎖したのです。
政策によってアートや文化を振り回すべきではない
役所や図書館にいくと、女性像のような彫刻作品を見ることができます。それらを調べていくと、ある一定の時期に多く設置されていることが分かります。おそらく「他の自治体がやってるなら、うちでも」という理由で置かれたのでしょう。この意識は今も引き継がれています。過疎地でのアートイベントへたくさん人がやってきた、という現在。おそらく「他の自治体に人が来たなら、うちでも」ということで、全国各地でアートイベントが開かれています。
しかし、本当に市民のことを思うなら、あちこちでアートイベントをする必要があるでしょうか? アートイベントの多くは自治体が主催、つまり税金をつかっています。税金を払う市民からすれば「無駄遣い」と映る可能性もあるでしょう。参加するアーティストからしても、作品が生かされる場ではない空間で作品を発表することが、果たして良いのでしょうか。集客だけが目的であれば、アートイベント以外の集客方法もあるはずです。
アートイベントに限らず、今回例に挙げたような、政治方針によってアートを手厚く扱ったり、逆にむげにしたりするのはいかがなものでしょうか? アート作品で世の中や人の意識を変えていきたい、と考えながら制作しているアーティストの表現をもっと認めるべきではないでしょうか。
私は選挙演説でアートや文化のことを聞きたい、と願います。決まってしまった政策によってアートや文化の状況が変わるのというのは、手遅れなのですから。