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金沢で[ジャパン・アーキテクツ]を開催中

現在、金沢市の金沢21世紀美術館で、[ジャパン・アーキテクツ 1945-2010]が開催中です。ポンピドゥー・センター パリ国立近代美術館が所蔵する作品・資料を核として、戦後日本建築を通観する展覧会です。

執筆者:川畑 博哉

現在、石川県金沢市の金沢21世紀美術館で、[ジャパン・アーキテクツ 1945-2010]が開催中です。
金沢21世紀美術館の10周年記念企画として、ポンピドゥー・センター(パリ、フランス)との共同主催により、同館副館長のフレデリック・ミゲルー氏を監修・キュレーターに迎え、戦後日本において大きな役割を果たしてきた建築家たちによる150を超えるプロジェクトを考察し、戦後日本建築史を紹介する展覧会です。
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ジャパン・アーキテクツ 1945-2010
会期:2014年11月1日[土]~ 2015年3月15日[日]
開場:10:00-18:00 (金・土曜日は20:00まで)
休場日:月曜日、12月29日[土]~ 2015年1月1日[木]、
1月13日[火]
料金:本展観覧券 一般=1,000円(800円)大学生=800円(600円)
小中高生=400円(300円)65歳以上の方=800円
「3.11以後の建築」展との共通観覧券 一般=1,700円(1,400円)
大学生=1,400円(1,100円)小中高生=700円(600円)
65歳以上の方=1,400円
※( )内は団体料金(20名以上)及び前売りチケット料金
会場/お問い合わせ:金沢21世紀美術館 石川県金沢市広坂1-2-1
TEL=076-220-2800 URL=http://www.kanazawa21.jp/
主催:金沢21世紀美術館[公益財団法人金沢芸術創造財団]、
ポンピドゥー・センター
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フレデリック・ミゲルー Frédéric Migayrou
ポンピドゥー・センター パリ国立近代美術館の副館長。ロンドン大学バート レット建築学校の学長兼教授。FRACサントルの建築コレクションの創設者であり、「アーキラボ」を主宰。
主な展覧会に「ノン・スタンダード建築」(2003)「モーフォシス」(2006)「ドミニク・ペロー」(2008)「モンドリアン/ デステイル」(2010)「ラ・テンデンツァ」(2012)「ベルナール・チュミ」「フランク・ ゲーリー」(2014、以上ポンピドゥー・センター)「アーキラボ2013 建築の自然化」(FRACサントル)など。
建築関連の出版物の監修、寄稿、講演多数。

6つのセクションに6つのカラー・コード

本展は、戦後に焦土化した国土を復興し始めた1945年から2010年までの65年間を、ミゲルー氏が6つのセクションに分け、各セクションのコンセプトに対応するカラー・コードを用いて、戦後日本建築を独自の視点で刺激的に読み解いています。
日本建築の資料を多数所蔵するパリ・ポンピドゥー・センターからの出品を含め、建築家たちの150を超えるプロジェクトの思考の過程を示す貴重なオリジナル作品、約300点が展示されています。
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会場の[金沢21世紀美術館]。設計:妹島和世+西沢立衛/SANAA
写真提供:金沢市


黒からダーク・グレーへ

「黒」をテーマとした第1セクションでは、約40年間にわたり一木努氏によって収集されてきた日本各地の建築物の断片を、建築家 鈴木了二の設計した黒いインスタレーションに納めて展示しています。
続く「ダーク・グレー」の第2セクションでは、坂倉準三、白井晟一、前川國男、村野藤吾、吉阪隆正などによる、庁舎や文化・教育施設といった公共建築の資料を通して、現代日本建築の基盤が確立されていく過程を知ることができます。
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1. 写真上:一木努コレクションを用いた鈴木了二によるインスタレーション。
写真下:内部に日本各地の建築物の断片が展示されている。

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2. 戦後建築の貴重な図面や資料が並ぶ第2セクションの展示室。


ライト・グレーからカラーへ

「ライト・グレー」の第3セクションは、戦後の高度成長経済により日本各地の都市化が進行し、海老原一郎、磯崎新、菊竹清訓、丹下健三などにより、日本におけるインターナショナル・スタイルが確立した時代です。
第4セクションの「カラー」は、工業技術の発展や新しい素材の開発が建築家に新たな可能性を提供し、大高正人、黒川紀章、槇文彦による「メタボリズム」という動向が出現した時代で、その集大成とも言える1970年の「日本万博」では、実験的なパヴィリオンが多数出現しました。
一方で、毛綱毅曠、六角鬼丈、山下和正、渡邉洋治などによるモダニズム批判、ポップ・アーキテクチュアといった多様なヴィジョンが登場した時代でもあります。
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1. 丹下健三の[国立屋内総合競技場(現 国立代々木競技場)](1962年頃/秩父宮記念スポーツ博物館蔵)と[東京カテドラル聖マリアカテドラル](1995年/森アートコレクション蔵)の模型。

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2.「メタボリズム」を実現した黒川紀章の[中銀カプセルタワー](1996年/ポンピドゥー・センター パリ国立近代美術館蔵)と[農村都市計画](1995年/森アートコレクション蔵)の模型。

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3. 磯崎新の[空中都市―渋谷計画](手前)と[空中都市―新宿計画](奥)の大型模型(ともに1990年/公益財団法人福岡文化財団蔵)とスケッチ(1991年/磯崎新アトリエ蔵)。

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4. 丹下健三と西山夘三による「日本万博」マスタープランの模型(1960年頃/大阪府日本万国博覧会記念公園事務所蔵)。

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5.「沖縄海洋博覧会 1975」で実現した菊竹清訓の[海上都市1975アクアポリス](制作年不詳/菊竹清訓建築設計事務所蔵)。

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6. 六角鬼丈の[金光教福岡高宮教会]の模型とドローイング(ともに1980年/六角鬼丈計画工房蔵)。

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7. 渡邉洋治の[第3スカイビル]の模型(1969年/個人蔵)。


ノン・カラーから白へ

「ノン・カラー」の第5セクションは、1970年前後の政治的な闘争を経た後、テクノロジー偏重の建築や理想主義的な楽観主義と袂を分かつ、伊東豊雄や長谷川逸子の「ライト・アーキテクチュア」や、安藤忠雄や藤井博巳などの「ミニマリズム建築」など、建築新しい世代の建築家たちが出現した時代です。
最後のセクションとなる「白」は、1990年代から、青木淳、石上純也、隈研吾、妹島和世+西沢立衛/SANAA、手塚貴晴/手塚由比、坂茂、 藤森照信、藤本壮介などが多彩なプロジェクトを実現し、日本人建築家として国際的にも活躍し注目され始めた時代です。
本展は、単に建築史としてだけでなく、戦後の日本社会を読み解くことができる非常に重要な展覧会と言えます。
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1. 天井の高い第5セクションの会場。

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2. 伊東豊雄の自邸[シルバーハット]の実施設計コンセプト模型とドローイング(すべて1982-84年/ポンピドゥー・センター パリ国立近代美術館蔵)。

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3. 篠原一男の[東京工業大学百年記念館]の模型とドローイング(すべて1982-84年/ポンピドゥー・センター パリ国立近代美術館蔵)。

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4. 北川原温の[ライズ]の模型(1990年〈2009年再制作〉/北川原温建築都市研究所蔵)。

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5. 東孝光の自邸[塔の家]の模型とドローイング(ともに昭和40年代/東環境・建築研究所蔵)。

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6. 高松伸の[ARK]の模型とドローイング(すべて1984年/高松伸建築設計事務所蔵)。

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7. 安藤忠雄の[Time's I & II][住吉の長屋][光の教会]の模型(1985年/安藤忠雄建築研究所蔵、1976年/ポンピドゥー・センター パリ国立近代美術館蔵、1999年/安藤忠雄建築研究所蔵)とドローイング(1985年、1975-76年、1987-89年/すべて安藤忠雄建築研究所蔵)。

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8. 現在活躍中の中堅・若手建築家の作品が並ぶ第6セクションの会場。
撮影:木奥惠三 提供:金沢20世紀美術館


磯崎新の講演会も

関連企画として、2015年の2月20日に、本展にも多くの作品を展示している建築家、磯崎新氏の講演会「『わ』空間の建築家」が開かれます。この機会にぜひお出かけください。

磯崎 新講演会「『わ』空間の建築家 」
日時:2015年2月20日(金) 18:30~20:30
会場:金沢21世紀美術館シアター21
定員:先着120名(事前申込制)無料
申込方法:12月10日(水) 10:00より金沢21世紀美術館ウェブサイトにて申込受付開始(先着順)

関連書籍も出版

本展の内容を網羅した書籍も新建築社から出版されました。より詳しく知りたい方は、ぜひご購読下さい。
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ジャパン・アーキテクツ1945-2010
発行:株式会社新建築社・金沢21世紀美術館?判型:221x298mm/頁数:224頁/言語:和・英併記 価格:2,315円(税別) ※金沢21世紀美術館のミュージアムショップでも取扱っております。TEL=076-236-6072

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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