株式戦略マル秘レポート/西村剛の「統計で勝つトレード」

トンボの買いサインは有効?

ローソク足には「カラカサ・トンカチ・トンボ・トウバ」といったユニークな名称・形の足型が存在します。今回は、始値と終値が同じ株価になることで出現する寄引同時線の一種である「トンボ」についてご紹介します。

西村 剛

執筆者:西村 剛

株式ガイド

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ユニークなローソク足

はじめに、基本的なローソク足の形と、そのローソク足が示す意味を確認しましょう。なお、ローソク足についての詳細は、こちらの記事「ローソク足とは?」に記載していますので、こちらもあわせてご覧ください。

基本的なローソク足

基本的なローソク足


上記のローソク足のほかにも、ローソク足には「カラカサ・トンカチ・トンボ・トウバ」といったユニークな名称・形の足型が存在します。今回は、始値と終値が同じ株価になることで出現する寄引同時線の一種である「トンボ」についてご紹介します。まず、寄引同時線とは、その見た目から十字線と呼ばれ、始値と終値の株価が同値になっていることを表します。「買いたい人」と「売りたい人」のバランスが拮抗している状態を表していることから、どちらかが勝れば、一転して、株価は大きく動き出す可能性があると言われています。

次に、トンボとは、上ヒゲのない寄引同時線のことを言い、寄付き直後に、株価が一旦下落するものの、引けにかけて大きく買いが入ることで、終値が始値の水準まで盛り返した動きを表します。株価の底値圏で「トンボ」のサインが出た場合は「買いたい人」が増えてきた状態となり、株価は下落から上昇に転じるといわれています。反対に、株価の天井圏で「トンボ」のサインが出た場合は「買いたい人」が減ってきた状態となり、株価は上昇から下落に転じるといわれています。今回は、「トンボ」が下落相場に出た場合に、実際に株価が上昇に転じるかどうかを、過去のデータを用いて検証してみました。

ユニークなローソク足

ユニークなローソク足


買いサイン「トンボ」は有効か?


検証内容は以下の通りです。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
対象:全銘柄
期間:1990/03/01~2014/10/29
1銘柄当たりの投資金額:20万円

買い条件
・0日前の始値が0日前の終値と等しい 
・0日前の安値が0日前の終値と比べて5.00%以上小さい
・0日前の高値が0日前の終値と等しい
・RSI(25日)が30.00以下
・上記の買い条件に合致した銘柄を翌日営業日寄り付きで買い

売り条件
・買った当日に引け成行で手仕舞い
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

当日のロウソク足が「トンボ」の形となり、買いサインが出た翌日営業日の寄付きで購入しその日のうちに手仕舞いを行います。なお、「株価が下落し、底値圏にある銘柄」と定義づけるために、RSIを用いて検証しています。RSIについての詳細は、「RSI(相対力指数)とは?」に記載していますので、こちらの記事をご参照下さい。

上記の売買ルールで検証すると、買ったその日のうちに手仕舞いを行うため、保有日数は1日未満となります。保有日数を1日未満とすることで「トンボ」の買いサインが出現した次の日の株価の動きを確認することができます。仮に、勝率が50%以上で、平均損益がプラスならば、「トンボ」が出現した次の日の株価が上がりやすい日となります。反対に、損益がマイナスであるならば、下がりやすい日となります。過去のデータを用いて検証した結果は、以下の通りです。

■保有日数1日未満の場合

システムトレードの達人

システムトレードの達人


勝率: 52.37 %
勝ち数: 684 回
負け数: 622 回
引き分け数: 680 回

平均損益(円): 1,601 円  平均損益(率): 0.80 %
平均利益(円): 17,930 円  平均利益(率): 8.97 %
平均損失(円): -14,604 円  平均損失(率): -7.30 %

合計損益(円): 3,180,568 円  合計損益(率): 1,590.29 %
合計利益(円): 12,264,257 円  合計利益(率): 6,132.27 %
合計損失(円): -9,083,689 円  合計損失(率): -4,541.98 %

PF: 1.350
平均保持日数: 0.06 日

検証結果を見てみると、勝率は52.37%、平均損益(率)は0.80%です。勝率が5割を超えており、1トレードあたりの「平均損益(率)」が0.80%とプラスとなっていることから、「トンボ」の買いサインが出現した次の日の株価は上がりやすい傾向があると言えるでしょう。「トンボ」の買いサインが出現した翌日は、買い勢力と売り勢力が拮抗し、買い勢力が上回る傾向があることが確認できました。

では、「トンボ」の買いサインが出現した後、数日間の株価はどのような傾向があるのでしょうか。今回の検証では、保有日数を延ばすことで売買ルールの成績がどう変化していくかを見ていきます。保有日数を延長することで、「トンボ」が本当に「下落から上昇」に転じるサインとして有効かを調べることができます。仮に、保有日数を延ばしても売買ルールの成績に改善がない場合は、「トンボ」の買いサインは、いわゆる相場の「だまし」と呼ばれるサインである可能性が高いでしょう。

検証内容は以下の通りです。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
対象:全銘柄
期間:1990/03/01~2014/10/29
1銘柄当たりの投資金額:20万円

買い条件
・0日前の始値が0日前の終値と等しい 
・0日前の安値が0日前の終値と比べて5.00%以上小さい
・0日前の高値が0日前の終値と等しい
・RSI(25日)が30.00以下
・上記の買い条件に合致した銘柄を翌日営業日寄り付きで買い

売り条件
・●●日経過後の翌日営業日寄り付きで売り
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

保有日数は、1日・3日・5日・8日・10日・15日・20日・25日で検証を行いました。以下が、検証結果をまとめたものです。

買いサイン「トンボ」のまとめ

「トンボ」検証結果まとめ

「トンボ」検証結果まとめ


検証結果を見てみると、保有日数を延長することで勝率や平均損益が段階的に改善されているのが確認できます。保有日数が15日の場合に成績改善効果が一番大きくなっており、勝率は53.43%、平均損益は4.05%となっています。勝率が5割を超えており、1トレード当たりの平均損益が大きくプラスとなっていることから、「トンボ」の買いサインが出現した後の、15日間は、株価が反発する期待が持てると言えるでしょう。よって、「トンボ」の買いサインが出現した場合には、15日間程度の保有を目安にすることで、不用意な損失を被るリスクを減らすことができるでしょう。

以上が、買いサイン「トンボ」の検証結果となります。相場には「トンボ」の買いサインの他にも様々な買いサイン、売りサインがあります。今回のような検証を行うことで、それぞれのサインについてどの程度の効果や数字があるのかを確認することができます。トレードの判断材料のひとつとして知っておくことで、不用意な損失を被るリスクを抑えることができるでしょう。また、ローソク足には、複数のローソク足を組み合わせることで、相場転換を暗示する一つのサインとなることもあります。その中にはあなたの気になる買いサイン、売りサインもあるでしょう。次は、あなたの気になるローソク足を過去のデータを用いて検証してみてはいかがでしょうか。

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(このテーマでの検証については、【システムトレードの達人】を使って検証しています。記事の内容に関しては万全を期しておりますが、その内容の正確性および安全性、利用者にとっての有用性を保証するものではありません。当社及び関係者は一切の責任を負わないものとします。投資判断はご自身の責任でお願いします。)
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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