その国らしさを漂わせ、作品を通して国際交流して見せた〈SHOWCASE〉
「美と価値を集め、記すこと。」を目的とした、展示内容に明確なキュレーションを施す〈SHOWCASE〉の会場は、階段を上り小さな入り口を通る緊張感があるものの、一歩入ると白くて柔らかな風に揺れる布でゆるやかに仕切られ、非常にリラックスした雰囲気のつくりになっていました。入場料500円を払えば誰でも見る事ができます。イベント後に送られてくるクオリティーの高い冊子は、それ以上の価値があります。体験した人だけがもらえるというスタイルも、ディレクター陣のストイックさを感じさせ、選ばれることの価値をデザイナーやアーティストは光栄に感じるのではないでしょうか。
「美と価値の対象は国や地域、時代、社会、環境などによっても異なり、そこには国それぞれの創造性があらわれます。この交流の場が次の状況を促し、新たな文化や思考のトレードを生み出す機会になり得ればと考えています。」*SHOWCASEパンフレットより抜粋。
今年は日本・スイス・台湾の3国からクリエイターを選出し、国毎にゾーニングして展示してありました。一つ一つの作品だけでは感じ取れない、「その国らしさ」のような、ある一定のトーンを国毎に感じとれました。
日本ゾーンの一角。手前に中坊壮介氏デザインの“Around the big table”。奥の4つのスツールは二俣公一氏デザインの“CONTROL/コントロール”/写真提供:SHOWCASE
台湾ゾーンの一角。YA-WEN- CHOUデザインの“傳家寶:梳子”、“藏匿的美好”/写真提供:SHOWCASE
スイス人デザイナーのカルロ・クロパス氏の〈Palutta〉は、類型学を基にスイス・グラウビュンデン州の伝統的な製造方法や料理の慣習をとりいれつつ、古くからの原型を新たな製造方法によって実現した緻密な図面作成によって現代的なフォルムに修正を加え、昔ながらの製造方法で工業生産されています。そこに、異文化の素材である漆(輪島塗)で仕上げをしています。
静かな佇まいに日本的なものを感じさせながらも、童話の挿絵でみるような形状の木目の美しいカトラリーがリネンに整然と並んでいる様子は初めてみる世界観で、非常に印象に残りました。 後日、会期に合わせて来日したデザイナーとディレクター陣の交流を思わせる、東京土産として購入した食品見本を載せた〈Palutta〉の写真が送られて きました。デザイナーの目で選んだ組み合わせは、静かな美しさにユーモラスを添えており、“作品を食器として使う”具体的なイメージを与えてくれていま す。〈Palutta〉は デザイナーのウェブサイトより、日本からの購入も可能です。
スイス人工業デザイナー〈Carlo Cropath〉氏の作品。その上に載った食品見本/写真提供:Carlo Clopath Industrial Design