温州みかんに含まれるβ-クリプトキサンチンの機能性は、様々な疾患予防に役立つと期待されています。
私たちの身体に存在するカロテノイド
カロテノイドは、黄からオレンジ、赤の色素成分のことをいいます。抗酸化作用など、その機能性に対して関心が高まっており、中でも今回は近年注目度の高い成分を取り上げます。以前にも、カロテノイドの種類と特性や摂取上の注意などについて、記事としてまとめています。「注目される「カロテノイド」ってな~に?」もお読みください。
ヒトの血液中には食物から吸収された20種類あまりのカロテノイドが存在します。主にはβ-カロテン、α-カロテン、リコピン、ルテイン、ゼアキサンチン、β-クリプトキサンチンの6種だと見られています。
意外かもしれませんが、カロテノイドは体内の肝臓、副腎、睾丸、卵巣、皮膚、眼、脳、肺の臓器や脂肪組織などに広く存在しているのです。それも、すべてがまんべんなくではなく、臓器や組織によって分布するカロテノイドの種類とその量も異なります。
表皮や皮下組織にはルテインやゼアキサンチンなど、脳にはβ-クリプトキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチンなど、網膜の黄斑にはルテインとゼアキサンチンなど、前立腺にはリコペンが特に多く蓄積しています。
これまでの記事で、リコピンやアスタキサンチン、ルテインなどは取り上げました。
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気になる加齢黄斑変性とルテインの関係
今回は、β-クリプトキサンチン、ゼアキサンチンについて取り上げます。
β‐クリプトキサンチン
β‐クリプトキサンチンは温州ミカン、ビワ、柑橘類、柿、パパイヤ、モモなどに含まれています。ガイドは2015年10月23日大阪で行われた「『みかんで健康』シンポジウム」に参加し、β-クリプトキサンチンの機能性等についての説明を聞いてきました。農研機構果樹研究所では、みかん産地の住民1,000 人を対象に約10年間栄養疫学調査を行った結果、血中濃度が高い人と、みかんをあまり食べない人とを比べて生活習慣病のリスクが低いということがわかったそうです。具体的な病気の予防として明らかになった点としては、次の7つがあげられました。
- 飲酒による肝機能障害のリスク
- 高血糖による肝機能障害リスク
- 動脈硬化のリスク
- インスリン抵抗性(インスリンの働きが悪くなる状態)のリスク
- 閉経女性での骨粗鬆症のリスク
- メタボリックシンドロームのリスク
- 喫煙・飲酒による酸化ストレス等が優位に低い
この研究では、7つの各疾患リスクにおいては、β-クリプトキサンチンが、他のβ-カロテンやα-カロテン、リコペン、ルテイン、ゼアキサンチンと比べて、優れた効果があることも報告されました。
特にβ-クリプトキサンチンは肝臓に対して効果があることが推察されます。金沢大学と食品総合研究所との共同研究により、肝臓におけるβ-クリプトキサンチンは抗炎症性作用や抗酸化作用があることが、脂肪肝炎のマウスを使用した遺伝子発現レベルで明らかになりました。
また最近の研究では、脳の老化予防や学習脳の低下予防などの老化予防対策や、メラニン生成抑制効果などについても研究が行われ、たいへん注目されています。