胃がんだけではない!ピロリ菌が原因となる症状・病気

ピロリ菌感染で様々な病気に影響か

ピロリ菌感染で様々な病気に影響か


ピロリ菌感染によって、「萎縮性胃炎」、「消化性潰瘍」、「過形成ポリープ」、「胃がん」、「胃MALTリンパ腫」、「機能性ディスペプシア」などの上部消化管疾患が引き起こされることが明らかになっています。

近年は、ピロリ菌感染は胃粘膜のみではなく、全身に対する感染症ととらえられ、ピロリ菌に関連する疾患を「ヘリコバクター・ピロリ感染症」と総称されるようになりました。ピロリ菌感染者全員がこれらの病気を発症するわけではありませんが、高リスクグループであることは明らかで、除菌が強く勧められています。
 

ピロリ菌感染で、貧血や慢性じんましんも

ピロリ菌が、「鉄欠乏性貧血」、「慢性じんましん」、「突発性血小板減少性紫斑病(TTP)」など消化管疾患以外の病気にも関与しているということが近年の研究でわかってきました。注目されている「鉄欠乏性貧血」と「慢性じんましん」について解説します。

■鉄欠乏性貧血
全身に鉄を運ぶヘモグロビンを作るのに必要な鉄が欠乏して、ヘモグロビンを作ることができなくなっておこる貧血です。日本人女性の約10%が該当し、30~40%はその予備軍といわれています。月経や消化管出血、偏食などによる鉄分の摂取不足が主な原因です。
 
思春期の女性

ピロリ菌感染により、集中力が低下したり、イライラしたり、不安になったりすることがあります

乳児期と思春期に発生しやすいのが特徴で、中学生の1.8%が鉄欠乏性貧血だという報告もあります。とくに思春期では、集中力が低下したり、イライラして不安になったりすることもあるので、学校の成績が下がる、スポーツ活動がうまくいかないなどの影響がでることがあります。

最近の研究では、ピロリ菌に感染していると、胃に感染したピロリ菌が消化管からの鉄の吸収を阻害したり、ピロリ菌の増殖に鉄が消費されて、鉄欠乏性貧血を引き起こしたりすることが明らかになっています。

日本小児感染症学会では、鉄欠乏性貧血に対して、「小児期では消化性潰瘍に次いでヘリコバクター・ピロリ関連の疾患として重要である。特に10歳以降の年長児の原因不明の鉄欠乏性貧血児の約60~70%がヘリコバクター・ピロリ感染があり、除菌成功した症例では貧血が治癒し再発を認めない」ということを言及しています。

ピロリ菌除菌は、鉄剤による貧血治療を優位に促進することが報告されています。鉄欠乏性貧血の原因が他にない、治療のため鉄剤を投与しても効果がない、あるいは鉄剤をやめると貧血が反復するといった貧血の場合には、ピロリ菌の関与が疑われると指摘されています。

■慢性じんましん
慢性じんましんは、さまざまな原因によって、皮膚のかゆみを伴う盛り上がった発疹がでる病気です。

海外で、ピロリ菌感染の患者さんに除菌治療をしたところ、症状が改善したという報告があります。日本でも、除菌に成功した例では64.7%で症状が改善したのに対して、感染が持続した例では改善が22.2%に留まり、優位な差があったという報告があります。慢性難治性のじんましんに対しては、除菌治療が治療の選択肢の一つとなっています。

ただし、じんましんは通常の経過観察においても改善し、また、じんましん発症の機序は複雑で、多数の因子が関与し種々の病因が考えられているため、ピロリ菌感染が関連した慢性じんましんを診断することは難しいとされています。

そのほか、ピロリ菌感染は、心血管疾患をはじめ、自己免疫疾患、神経疾患、肝胆膵疾患など種々の全身疾患との関連性も報告されています。単にピロリ菌感染の有無だけではなく、ピロリ菌遺伝子タイプの違いが疾患の発症に関わっているのではないか、ということを示唆する報告もあります。


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