ACL出場権はストライカーの活躍がカギに
J1の上位3チームには、AFCチャンピオンズリーグ(以下ACL)の出場権獲得という目標もある。可能性を残すのは、3位の鹿島アントラーズ(勝点51)、4位の川崎フロンターレ(同51)、5位のサガン鳥栖(同50)、6位の柏レイソル(同48)だ。カギを握るのは各チームのストライカーである。
川崎FはブラジルW杯日本代表の大久保嘉人(32歳)、鳥栖は豊田陽平(29歳)と、絶対的な得点源を持つ。ここまで15ゴールで得点ランキング首位の大久保は、2年連続の得点王を視野にとらえる。一方の豊田も13得点をあげ、ランキング3位で大久保を追いかける。アギーレ監督へのアピールも、彼らのモチベーションとなっている。
鹿島は得点源を失った。チーム最多の10得点をあげているダヴィ(30歳)が、ヒザのケガで戦列を離れてしまったのだ。世代交代を進めながら優勝圏内に食い込んできた名門の胆力が、残り4試合で問われる。
柏レイソルの前線は、レアンドロ(29歳)のひとり舞台だ。Jリーグでの実績が豊富なブラジル人は、ワンチャンスを得点に結びつける決定力を備える。柏レイソルがACL圏内へ飛び込むことができたら、そこにはレアンドロの活躍があるはずだ。
「現実的」になれたチームがJ1に残る!
リーグ制覇やACL出場権争いよりも混沌としているのが、J1残留をかけたサバイバルだ。J1は下位3チームがJ2へ降格することになり、すでに徳島ヴォルティスの最下位が決定した。しかし、16位と17位は最終節までもつれそうだ。
残り4試合の段階で、残留を争っているのは5チームだ。13位のヴァンフォーレ甲府と14位のベガルタ仙台は勝点33、15位の大宮アルディージャと16位の清水エスパルスは同31、17位のセレッソ大阪は同30と、5チームが勝点3差でひしめきあっている。
残留争いのキーワードは「現実的視点」だ。
シーズン開幕前から、残留争いに加わることを覚悟しているチームは少ない。「最終的には残留が目標になるかもしれない」という思いがあっても、なかなか割り切ることはできないものだ。自分たちが目ざすサッカーで、勝点を積み上げていこうとする。
そうやって理想を求めていくと、たとえ負けても「内容は悪くない」とか、「このサッカーを続ければ勝てる」といった思いが湧き上がる。選手なら当然の心理だ。
しかし、残留争いで問われるのは試合内容ではない。
結果だ。
自分たちが目ざすサッカーとかけ離れた内容でも、必要な勝点をつかむという「現実的視点」が、何よりも大切なのだ。
ほぼ毎シーズン降格の危機にさらされながら、それでもJ1に踏みとどまってきた大宮は、“生き残るための切り替え”ができるのだろう。甲府にも同じことが言える。
逆にセレッソや清水は、気持ちの整理が難しいかもしれない。
セレッソは昨季4位に食い込み、今季はACLに出場している。FW柿谷曜一朗(24歳)はバーゼル(スイス)へ移籍したが、現役ウルグアイ代表FWのディエゴ・フォルラン(35歳)が加入している。日本代表の経験者も多い。少なくともACL出場を争える戦力が揃っている。それだけに、理想と現実の狭間で揺れているのかもしれない。
これまで一度もJ2に降格していない清水にも、セレッソと同じことが言えそうだ。
磐田のJ1復帰はなるか?
22チームが2回戦総当たりで争うJ2は、湘南ベルマーレが首位でのJ2復帰を決めた。さらにここまで2位の松本山雅FCが、クラブ史上初の昇格へ近づいている。かつてアルビレックス新潟と湘南をJ1へ導いた反町康治監督(50歳)が率いる松本は、攻守にハードワークできるチームだ。残りひとつの昇格ワクは、リーグ順位が3位から6位の4チームがプレーオフで争う。
注目はジュビロ磐田だ。
DF駒野友一(33歳)、伊野波雅彦(29歳)、MF松井大輔(33歳)、FW前田遼一(33歳)ら日本代表経験者を揃えるかつての名門は、残り4試合の段階で3位につけている。自動昇格できる2位以内を目指していたチームには、3位でも屈辱だ。シーズン終盤には元日本代表でクラブOBの名波浩(41歳)が監督に就任し、チームの立て直しをはかっている。
J1からJ2へ降格したチームは、1年で復帰を果たさないとなかなかJ1へ戻れない傾向にある。2年目以降は主力選手を引き留められなかったり、新たな戦力補強が難しくなったりするのが原因だろう。
かつてアジアの頂点にも君臨した磐田は、J1へ返り咲くことができるのか。J2はリーグ戦終了後のプレーオフからも目が離せない。