伝統ある保健師教育

香川県立保健医療大学の開学は2004年。比較的新しい大学と思われるかもしれませんが、実はその歴史はとても古く、1964年の香川県看護専門学校公衆衛生看護助産学科にまでさかのぼります。この専門学校は全国に先駆けて助産師と保健師の合同教育を始めた学校で、1996年に香川医科大学(現、香川大学)で保健師教育を始めるまで、県下唯一の保健師教育機関でした。

また、県の学校ということで、教員は県の保健師を経験した方がほとんどで、看護の専門性と行政を合体させた教育をモットーにしています。

学生の出身地は約6割が県内。残りはかなり幅広く、中国四国はもちろん、近畿、そして北海道や沖縄から集まっています。

充実した事例検討で保健師能力アップ

保健師教育は選択制で、看護学科の定員は70人。そのうちの20人を目安に2年次の3月に選抜が実施されています。基準はそれまでの必修科目の成績、選抜時の試験、及び面接の3本立てになっています。

実習先は県が主導になり割り振られ、その内容は同校長年の歴史に裏打ちされたノウハウが詰まっています。代表的なものは2つあり、ひとつは「個別支援ができないと地域が見えない」との思いから採用している事例検討です。

これは保健師固有の技術を検討のなかから見出していく目的があり、学生にはひとり2事例(県と市町ひとつずつ)を担当。検討会は学生たちだけの運営にさせず、教員が必ずファシリテーションを行い内容の濃いものに仕上げているのが特長です。

訪問へのこだわり

もうひとつは、しっかりした訪問ができる学生を育てるための訪問演習で、保健師教育担当の高嶋伸子教授は、その意義についてこう力説しています。

「ピンポン(訪問)して不在だったらすぐ帰ってきてしまう。例え会えても、質問ばかりで周りも家族も地域も見ないで帰ってきてしまう新人が多いとの話を現場から随分聞くからです。単に行けばいいではなく、保健師らしい訪問とな何なのかもしっかり教育していきます」

高嶋伸子教授(左)と合田加代子准教授(右)

高嶋伸子教授(左)と合田加代子准教授(右)

事例検討を行うには訪問がしっかりできないといけない。この2つはセットで考えているという意味ですね。

「臭いや置いているものから暮らしぶりや経済状況が分かります。全てを聞かなくても見えるものがあるのが訪問である。単なるデータを落とし込んで診断するのなら事務職でもできます。数値と実際の暮らしとどう関係性があるのか語れないと保健師の存在意義がないのです」

高島教授がこう付け加えると、演習担当の合田加代子准教授からも「地域の意味は家庭訪問するとつながってよく分かるのです」と、しっかり訪問すると家族はもちろん、地域の特性や問題も見えてくるとの話もありました。

学科全体の特長として注目したいのは、健康支援を通して地域社会に貢献できる質の高い人材育成を目指した「健康サポーター養成講座」を設けていることです。看護学科だけでなく、臨床検査学科も共同で行っているもので、授業のひとつではないものの、講座を通して地域住民とのコミュニケーションを学ぶことができます。また、修了者には学長より大学の健康サポーターとしての認定証も授与されます。ちなみに、この講座を受けた学生は活動を通して保健師の仕事をよく理解するようです。

先輩保健師との交流会も実施

冒頭でも触れているように、同校は長い歴史を持っていることから、県内で就職すれば、ほとんどの職場に先輩がいます。これはとても心強いことだと思います。また、大学となってからの卒業生で保健師として就職した人たちで作る根若(こんにゃく)会という交流組織もあるそうです。年3回の交流会は、保健師を希望する学生であれば参加も可能とのことでした。

最後は、先生たちからのメッセージです。

「本学は個別支援を大事にしています。地域の人をひとりひとり大事にするようにとの教育はもちろんのこと、私たち教員も学生に対しても集団でひとくくりに見るのではなく、ひとりひとりに関わりながら一緒に夢を叶えられるようにしていきたいと思っています」(合田准教授)

「看護、そして保健師の根っこは人に対する愛情ですが、とくに市町の保健師は24時間住民と共にあり、辛いことがあってもそこから逃れられないなど、きれいごとだけで語れない部分もあります。そんな現実も知ってもらいつつも、大きな夢をもって卒業していけるように私たちも関わっていきますね」(高嶋教授)

(大学データ)
香川県立保健医療大学保健医療学部看護学科地域看護学:高嶋伸子教授/合田加代子准教授/辻よしみ講師/林佳子助教
定員:70人
保健師コース定員:約20人
保健師コース最終選抜時期:3年進級前

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。