FJR1300ASは「重い」にもメリットがあることを感じさせてくれる
最近ヤマハがリリースしたMT-07、MT-09は圧倒的な車両重量の軽さがセールスポイントの一つです。取り回しが軽く、車体が「軽い」という事のメリットをマシンを操作する様々な場面で感じさせてくれますが、逆にFJR1300ASは車両重量が296kg。またがった瞬間に「重い」と感じるバイクです。しかし、そもそもFJR1300ASは長距離ツーリングを快適に走行する為に開発された車両です。走行時には良く出来た足回りのセッティングも関係していますが、重いことによって直進の安定性を感じます。高速道路での100km/h走行は快適そのもので、不快な振動を一切感じさせず、ウインドスクリーンを一番伸ばす設定にして少し伏せて乗ると、風の音も消え、エンジンの音だけが耳に入ってきます。
普通のバイクで60km/hぐらいで走っている感覚で100km/hで走行することが出来るため、ツーリングなどで目的地に到着した際の疲労感はかなり軽減されると思います。また、FJR1300ASのシート高は805mmと低めに設定されているのですが、シートが非常に広く股が広がった状態でシートに座る為、足つきは良いとはいえません。元々重い車体を左足の爪先立ちで支えるのでストップ&ゴーの多い市街地ではしんどいのですが、ツーリング時にはシートが広いことでお尻の痛みが軽減されることは間違いありません。
車体は大きいが運動性能は抜群で走り出せば快適そのもの
ヤマハの車両のラインナップの中でも大柄で重い車体なのですが、走り出してしまえば、快適そのものです。Dモードをパワー感・スポーティーな走行フィーリングがメインのモードであるSモードに変更すると、鋭いスロットルレスポンスになり、少しアクセルを回せばあっという間に100キロまで加速します。街中ではSモードを使用すると、すぐに制限速度になってしまう為、あまり使わないと思います。ですが、高速道路での車線変更時などSモードが有効と思えるシチュエーションは多々あります。
また電子制御の前後サスペンションはデフォルトの設定だと街中を快適に走行できる柔らかめのセッティングになっていますが、スポーツ走行をするのであれば、固めのセッティングにできる為、シチュエーションに応じて簡単に変更可能です。通常はマシンを降りないと出来ないサスペンションセッティングをボタン一つで変更できるメリットはとても大きいといえます。
コーナリング時もとても素直なハンドリングが可能ですので、大きさと重さにビビリながら運転したとしても何とかなってしまう懐の深さがあります。少しなれて積極的に体重移動をしながら操舵してみると、コーナリング中も安定感があります。山道などを走行する際も大きさや重さをデメリットに感じることはあまりなさそうです。
パニアケースとリアボックスを装着して旅に出たくなる1台
ツーリングマシンでありながら、一週間の通勤で使っても苦にならない懐の深さは素晴らしいの一言ですが、やはりFJR1300ASの最大の魅力は走行時の安定感。様々な装備がライダーをサポートし目的地に到着した際の疲労度の低さは、一般的なバイクの比にならないでしょう。また全てのギア操作をマシンに委ねないのも、FJR1300ASの個性で「ヤマハらしい」と感じさせる点です。あくまで操舵するのは人であり、マシンはそのサポートをする物というヤマハの考え方がそのまま反映された1台といえます。
週末パニアケースとリアボックス一杯に荷物を積めて、ツーリングやキャンプなど、遠くに行きたいと思わせてくれる最高のツーリングマシンです。
ヤマハ FJR1300ASのエンジン音 マフラー音はこちら