住宅というのは、こだわればこだわるほど良い住宅になるものです。しかし予算には限りがあるのも事実です。その限られた予算の中でこだわりを実現するためにはどうしたらいいのでしょうか。それはイメージをしっかりと持ち、それをハウスメーカーなどの担当者に伝えることが重要になります。今回の記事では、そのためのメソッドについて住友林業を例に考えていきます。
トップクラスの設計士による住まいづくりプロジェクト
さて10月8日に、住友林業による「邸宅設計プロジェクト」に関するイベントがありました。具体的なイベントの内容は、東京都世田谷区にある住宅展示場「駒沢公園ハウジングギャラリー」に新たなモデルハウスを開設するなど、今後、富裕層を対象とした邸宅の供給に力を入れるというものです。住友林業のCMにも出演している大相撲の横綱・白鵬関も登場しました。駒沢展示場のモデルハウスは1棟6000万円以上の顧客を対象にしたものです。実際の住まいづくりは、同社でもトップクラスの設計者からなる「デザインパートナーグループ」と呼ばれる人たちを中心に、施主の要望を一つずつ細やかに聞き取り、反映しながら家づくりを行うかたちです。
最近、ハウスメーカーの多くはこのような富裕層向けの住まいづくりに力を入れていますが、住友林業の今回のプロジェクトとこのモデルハウスのオープンもその一例といえます。その背景には、消費増税以降、住宅の需要が減っている中、富裕層の需要は底堅いということがあるようです。
ちなみに、駒沢公園ハウジングギャラリーには、各ハウスメーカーが同様に最高級仕様のモデルハウスを展示しています。住宅展示場というのは、各地域の土地柄に合わせてモデルハウスが建てられるものですが、ここは我が国有数のハイグレードなモデルハウスが建ち並んでいる場所です。
駒沢に完成した富裕層向けモデルハウスの内容とは?
話を住友林業の新しいモデルハウスに戻すと、建物は「ビッグフレーム構法」と呼ばれる住友林業オリジナルの木造技術が用いられたフラット屋根の形状。上から見るとロの字状のデザインとなっており、庭が設けられ大きな銘石が存在感を放っていました。建物は敷地を目一杯活用して建てられていますが、これは「住友林業では都市部の限られた敷地を有効活用して建てられるのですよ」ということを表現しています。また、建物内部に庭を設けるのは、狭小敷地であっても、日照を確保したり、自然を感じられるようにするための設計上の工夫。要するに、建物から庭へと一続きの「内に開く」空間を提案しているのです。
驚かされるのが、居室を構成する素材がそれぞれ非常に凝っていたことです。インテリアはデザイナーの橋本夕紀夫氏とコラボレーション。例えば、室内の壁には伝統的な左官技術による塗り壁のほか、漆塗りや金箔、銀箔、建具にも組子障子などが各所に取り入れられ、日本の伝統や文化を表現されていました。
中でも興味深かったのが、朱色の漆塗りが施された浴槽でした。これは長野県にある高級旅館の浴槽を参考にしたもので、漆は水に強くカビにも強いなど衛生面でも優れている素材とのことから、今回このモデルハウスで採用されたといいます。これだけで300万円くらいするそうです。このほか、洗面所のボウルも同じように漆塗りのものが設置されていました。
さて、皆さんはここまで読んで「富裕層向けのモデルハウスだから、ここまで豪華なんじゃないの」と思われていると思うでしょう。しかし、このモデルハウスをみることで、少なくとも住友林業のトップクラスの設計者による住まい提案をお金をかけずみることができ、それだけで皆さんの住まいづくりのヒントを得られるはずです。
次のページではこの事例を元にハウスメーカーという存在、モデルハウスの活用法なども含めて確認していきます。