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京都の庭園 ゆったりお庭鑑賞は一人旅がおすすめ

一人でゆっくり自分を見つめ直したい、誰にも邪魔されず、とにかくぼーっとしていたい。そんなときにおすすめなのがお寺でのお庭鑑賞。京都の数々の庭園の中から、一人旅にふさわしい、ゆったりと拝観させていただける7つのお庭を選んでご紹介します。

森川 天喜

執筆者:森川 天喜

国内旅行ガイド

一人旅におすすめの京都のお庭7選

龍安寺の知足のつくばい

龍安寺の知足のつくばい

一人でゆっくり自分を見つめ直したい、誰にも邪魔されず、とにかくぼーっとしていたい。そんなときにおすすめなのがお寺でのお庭鑑賞。

京都の数々の庭園の中から、一人旅にふさわしい、ゆったりと拝観させていただける7つのお庭を選んでご紹介します。

【目次】  

宝泉院 大原の里の「立ち去りがたい」庭

洛北の大原の里というと、誰もがまず思い浮かべるのが、歌にも歌われる三千院。それから、平清盛の娘で、安徳天皇の母となった建礼門院徳子(けんれいもんいんとくこ)が、静かに余生をおくった寂光院も、多くの人が訪れます。

しかし、大原で最も味わい深く、一人旅にもぴったりだと思うのは、宝泉院というお寺。仏教音楽「声明(しょうみょう)」の道場として栄えた大原寺(勝林院)の住職の坊(ぼう、居所のこと)としての歴史を持つお寺です。
宝泉院庭園

宝泉院庭園

このお寺の『盤桓園(ばんかんえん)』と名付けられた庭は、客殿の柱と柱の間の空間を絵画を飾る「額縁」に見立てて鑑賞する、いわゆる「額縁庭園」。抹茶とお菓子をいただきながら、ゆったりと拝観することができます。

座る場所は、緋毛氈(ひもうせん)が敷かれた場所ではなく、壁際からズームアウトして眺めたほうが、より美しい「額縁」を楽しむことができます。

庭園には、大きな「五葉の松」をはじめ、楓、桜、梅などが植えられており、一年中、いつ来ても異なる自然の美しさを味わうことができます。さらに、生け垣の向こうの竹林の間からは、山肌が垣間見え、山里・大原ならではの景色が広がります。
つくばい(宝泉院)

つくばい(宝泉院)

ちなみに、お庭の名前の「盤桓」というのは、うろうろする、ぐずぐずする、という意味。転じて、「立ち去りがたい」庭ということで、『盤桓園』と名付けたのですね。

宝泉院で、もうひとつ見ておきたいのが、伏見城の床板の遺構を使ったという書院廊下の「血天井」。いわれてみれば、確かに天井のシミは、「伏見城の戦い」で戦死した武者の顔のように見えます。

<DATA>
■宝泉院
住所:京都市左京区大原勝林院町187
アクセス:京都駅より京都バス17系統・18系統に乗車し、約65分の「大原」下車
地図 → 宝泉院へのアクセス
ホームページ → 宝泉院ホームページ
 

詩仙堂 美しい名前に誘われて

「詩仙堂(しせんどう)」って、何ともいえない美しい響きですね。

この建物を建てたのは、江戸時代初期の風流人・石川丈山(いしかわじょうざん)。なかなか面白い人物で、もとは徳川家康の寵臣だったのが、大坂夏の陣で抜け駆けをしてしまい、軍規違反で徳川家を去り、その後、広島の浅野家などに仕えたものの、最終的に京都に舞い戻り、59歳の時に詩仙堂を造営。

以後、様々な文化人や風雅の士と交わりながら、90歳で亡くなるまで生涯独身を貫き、この地で暮らしたといいます。書の大家で、我が国における煎茶(文人茶)の開祖なのだそうです。
詩仙の間から庭を眺める

詩仙の間から庭を眺める

「詩仙堂」の名前は、中国の詩家36人の肖像を狩野探幽(かのうたんゆう)に描かせ、その上に、丈山自ら筆をふるって各詩人の詩を書いたという「中国三十六歌仙像」が「詩仙の間」に掲げられていることに由来します。
鹿おどし

鹿おどし

さて、庭を眺めていると、時々、コンッという音がきこえてきます。庭園の水を利用した、いわゆる「鹿(しし)おどし」の音。なんと、丈山こそが、この「鹿おどし」の考案者なのだそうです。

静寂の中に響く音が風流なのはもちろん、音を鳴らすことで、鹿や猪が庭園を荒らすのを防ぐという実用的な役割もあったようです。
詩仙堂の紅葉

詩仙堂の紅葉

ちなみに、詩仙堂は、紅葉狩りにもおすすめ。近隣には、紅葉と苔のコントラストが美しいお庭が見られる圓光寺、テレビCMで有名になった紅葉の名所、曼殊院などもあります。あわせてお楽しみください。

<DATA>
■詩仙堂(丈山寺)
住所:京都市左京区一乗寺門口町27
アクセス:叡山電車「一乗寺」駅下車、徒歩約15分。または、京都駅より市バス5系統に乗車し、「一乗寺下り松町」下車、徒歩7分
地図 → アクセス・交通の御案内
ホームページ → 詩仙堂ホームページ
 

円通寺 失われかけた極上の借景

円通寺は、江戸時代初期に、後水尾上皇(ごみずのおじょうこう)が修学院離宮に移る前に住まわれた「幡枝(はたえだ)離宮」の跡で、「幡枝小御所」「幡枝茶園」とも呼ばれていました。
円通寺の借景庭園

円通寺の借景庭園

客殿前の枯山水庭園は、「借景庭園」の代表作の一つに数えられます。「借景」というのは、山などの自然をあたかも庭園の一部のように背景として取り込む作庭手法のこと。

円通寺庭園が「借景」とするのは比叡山。庭園に向って腰を下ろすと、柱と柱の間に、生垣と樹木と比叡山が、あたかも一幅の絵のように融和して見えます。後水尾上皇は、比叡山が美しく見えるこの地を選ぶのに12年もの歳月を費やしたそうです。

近年、この庭園の景観を破壊するマンション建設計画が持ち上がり、多くの人が「もう駄目だ」と思ったそうですが、反対運動などの甲斐あり、計画は中止となりました。

<DATA>
■円通寺
住所:京都市左京区岩倉幡枝町389
アクセス:京都市営地下鉄烏丸線「北山」駅又は「国際会館」駅下車、タクシー約5分。バスは本数が少ないのでおすすめできません。
地図・拝観案内 → 京都観光研究所 円通寺
 

龍源院(大徳寺塔頭) 極小の宇宙

洛北の紫野(むらさきの)の地に、大徳寺という大きな禅寺があります。
大徳寺『金毛閣』

大徳寺『金毛閣』

『金毛閣(きんもうかく)』と呼ばれる山門改修にあたり、千利休が、自身の木像を山門二階に置き、その股下を秀吉に通らせたことで怒りをかい、それが切腹せざるをえなくなった原因のひとつであるといわれています。

また、昔話に出てくる頓智(とんち)で有名な一休さんのモデルにもなった、一休宗純(いっきゅうそうじゅん)が住職を務めた寺としても知られています。
龍源院『東滴壺』

龍源院『東滴壺』

大徳寺には、数多くの塔頭(たっちゅう)がありますが、そのひとつ、龍源院にある、我が国最小の石庭といわれるのが『東滴壺(とうてきこ)』という名前の壺庭。

廊下を進んでいくと方丈の東に、まるで建物と建物のあいだに「うっかり」できてしまったような、ほんの狭い空間があり、そこにその庭はあります。

波のない静かな水面に、ポツンと滴った水滴から、しだいに広がっていく波紋。表現しているのは、恐らく、ただそれだけのこと。

しかし、見ているうちに、このわずか4坪の空間に、宇宙の無限の広がりを感じたかと思うと、次の瞬間には、底なしの深淵に吸い込まれそうになったりと、なんとも不思議な庭です。

龍源院と同じく、大徳寺の塔頭・大仙院の庭も、見るべき価値の高い庭です。

<DATA>
■龍源院
住所:京都市北区紫野大徳寺町82
アクセス:京都駅より市バス206系統に乗車し、「大徳寺前」下車
地図・拝観案内 → 京都観光Navi 龍源院
 

東福寺 アーティスティックな現代庭園

紅葉の名所としても知られる東福寺。お寺の名前は、奈良の東大寺から「東」、興福寺から「福」の一文字ずつをいただいたのだそうです。

このお寺で、ぜひとも拝観したいのが『八相の庭』と命名されたモダンな庭。昭和14年に重森三玲(しげもりみれい)氏が作庭したもので、方丈の東西南北に、それぞれ趣の異なる4つの庭が配されています。
東福寺『八相の庭』東庭

東福寺『八相の庭』東庭

『八相の庭』のうち西側の「市松模様」の庭

『八相の庭』のうち西側の「市松模様」の庭

『八相の庭』のうち北側の小さな「市松模様」の庭

『八相の庭』のうち北側の小さな「市松模様」の庭

東司(とうす・トイレのこと)の柱石の余材を利用して抽象的に「北斗七星」を表現したという東庭も興味深いですが、有名なのは、西と北の「市松模様」の庭。「市松模様」というのは、ルイ・ヴィトンの「ダミエ」のような格子柄のことです。

「市松模様」をサツキの刈り込みで表現するという発想は見事ですが、これは手入れが大変そうですね。

<DATA>
■東福寺
住所:京都市東山区本町15丁目778
アクセス:JR奈良線・京阪本線「東福寺」駅下車、徒歩10分
地図 → 交通アクセス
ホームページ → 東福寺ホームページ
 

青蓮院 青色の美しい光に魅せられて

東山の裾野、粟田口(あわたぐち)の青蓮院は、代々親王が住職を務めてきた門跡寺院。青蓮院には2つの庭園があり、ひとつは室町時代に相阿弥(そうあみ)が作庭したとされる池泉回遊式庭園、もうひとつは小堀遠州の作といわれる『霧島の庭』で5月に咲く霧島ツツジが有名。

いずれも門跡寺院らしく格調の高い庭で、庭の中を散歩すれば、四季折々の美しい自然に癒やされます。
多数の青色LEDの光を用いた芸術的なライトアップ

多数の青色LEDの光を用いた芸術的なライトアップ


青蓮院の庭の、ふだんとは全く異なる様子を楽しむことができるのが、春秋に行われる夜間ライトアップ。

京都では、あちこちで夜間ライトアップが行われますが、青蓮院では多数の青色LEDの光を用いた、他の寺院とはまったく表現手法の異なる高度に洗練された芸術的なライトアップが行われます。
庭園には、豊臣秀吉の寄進という「一文字手水鉢」がある

庭園には、豊臣秀吉の寄進という「一文字手水鉢」がある


闇夜の中で、光っては消え、また光っては消える、この無数の青い光の群れは、我々の住む宇宙の星々なのだろうか? そんな思いに駆られました。

<DATA>
■青蓮院門跡
住所:京都市東山区粟田口三条坊町
アクセス:地下鉄東西線 「東山駅」下車、徒歩5分
地図・拝観案内 → 拝観のご案内
ホームページ → 青蓮院門跡ホームページ
 

龍安寺 世界的に有名になった石庭

京都の寺院の庭で、やはり外せないのが、龍安寺の石庭。
龍安寺の石庭

龍安寺の石庭

昭和50(1975)年に、イギリスのエリザベス女王が公式訪日された際、この石庭を見学され、絶賛されたことが海外のマスコミに報道され、知名度が一気に上がりました。そんなこともあり、この庭では、海外からの観光客もよく見かけます。

さて、この石庭、一般には『虎の子渡しの庭』などといわれます。一面に敷き詰められた白砂を水に見立て、親虎が子虎をかばいつつ渡河する様子を表現しているというわけです。まあ、それもいわれてみれば、という感じで、茫洋たる海に浮かぶ島々という風に見立てることもできるでしょう。
龍安寺の石庭

龍安寺の石庭

作庭者は不明。したがって作庭意図も明らかになっていませんから、もう、この庭に何を見るかは、見る人任せということで良いのでしょう。

お寺で渡されるパンフレットにも、この石庭に関する説明らしい説明はなく、ただ、

「石の象(かたち)、石群、その集合、離散、遠近、起伏、禅的、哲学的に見る人の思想、信条によって多岐に解されている。」

とだけ書いてあります。これ以上の説明のしようがないのだと思います。在るがまま。見えるがまま。余計な先入観を入れず、余計な説明を加えようとせず、まずは、そのものと向き合ってみることが、大切なのだと思います。

一人旅にぴったりなお庭だと思いませんか?

<DATA>
■龍安寺
住所:京都市右京区龍安寺御陵下町13
アクセス:京福電車「龍安寺」駅下車、徒歩7分。または、京都駅から市バス50番系統に乗車し、「立命館大学前」下車、徒歩7分
地図 → 龍安寺への道
ホームページ → 龍安寺ホームページ
 

京都散歩は、地下鉄とバスを上手に利用しよう

京都は地下鉄とバスを利用すると効率よく散歩できます。バスは、主に使うのは、京都バスと京都市バスです。

京都市交通局(地下鉄・市バス)

京都バス株式会社

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