地図本来の魅力を存分に発揮できている地図
京都の地図は色々と販売されています。歴史地図、寺社仏閣の地図、飲食店やカフェの地図。古地図と組み合わせたものなんかも人気ですね。博物館や美術館を集めた地図もあります。様々なジャンルの地図が存在しますが、今回紹介する「京都凸凹地図」は、地図としてはオーソドックス、王道、ど真ん中。普通に、しっかりと、京都の地形を紹介しています。地図が地形を説明しているなんて、きわめて当たり前の話しなんですが、普通の地図と違うのは、そのこだわり具合です。
「京都凸凹地図」では京都のメジャーな観光地の地形解説を17ヵ所、そのうち13ヵ所は散歩コースを紹介しています(一部は京都市外)。散歩コースの紹介ページではコース、スポット、そしてスタートからゴール迄の水平距離/標高のグラフが記載されています。また各エリアには3D地図ソフト「カシミール3D」と国土地理院の地図データを使用した作成された、凸凹具合がわかりやすい地図が掲載されています。その地図の色合いを見ているだけでも観光気分に浸れました。
京都の魅力は凸凹にあり!
しかし、「京都凸凹地図」を観光をお散歩地図として終わらせるのは勿体ない話しです。もう一歩突っ込んだディープな欲求にも応えてくれるのが本書の特徴です。京都の魅力は歴史だけではありません。個人的には、歴史にも負けないくらい地理的魅力のある街だと感じています。特にこの地図は凸凹(高低差)に注目しているだけあって、水/川関連の魅力を伝えてくれます。桂川/宇治川/木津川の合流、出町柳の鴨川デルタ、琵琶湖疎水、巨椋池干拓地。面白そうでは無いですか? この辺りのキーワードを聞いて興味を持った方はこの本、是非手にとって下さい。そうでない方は……、純粋に「お散歩コース」をお楽しみ下さい。スポット解説も豊富です。
この本の冒頭に地図研究家今尾恵介、東京スリバチ学会会長皆川典久、ランドスケープアーキテクト石川初の三者による対談がある。これが濃い。石川氏が鴨川周辺の扇状地を見るや「…うわー、超扇状地。すごくきれいな」と大興奮。今尾氏にいたっては「撫でてみたくなるような、きれいな扇状地でした」と、もはや地図に対する感情とは思えない言葉を発しています。これでは扇状地ならぬ「扇情地」です。この本一冊で、好きな人ならどれほど楽しめるかがよくわかります。
徒歩で京都観光をしたい方、京都での土地勘を深めたい方、忙しくって京都に行きたくてもいけない方、そんな方は是非本書をお読み下さい。もちろん、現在京都に住んでいる方があらためて自宅周辺の地形を確認するのにも有意義です。