親が生存中に空き家になった場合は?
実家が空き家になるのは、親が亡くなった場合だけではありません。親が高齢者用施設などに住み替えた場合なども空き家になります。親が誰かに自宅の管理を依頼していればよいですが、介護が必要になった場合は管理どころではなくなるかもしれません。売却する場合、住まなくなってから3年目の年末を過ぎてしまうと、売却益から最大3000万円が控除できる居住用財産の「3000万円特別控除」が使えなくなります。長く放置されて荒れた家を売る場合、家を解体して更地で売るほうがよいとなったら、解体費がかかる(あるいは解体費分安く売る)こともあり得ます。
一方、貸す場合は不動産所得の確定申告が必要になりますが、貸家(賃借人がいる状態)のままで相続すれば、不動産の評価額が低くなるというメリットもあります。逆に放置してから貸す場合は、設備の交換や大掛かりなリフォームが必要となる場合も。一度貸すと借家契約が解除できないという不安があるなら、定めた期間ごとに再契約する「定期借家」契約にするという方法もあります。
いずれにせよ、空き家のまま放置していると、お金を生まないばかりか、資産価値が減ったり、有利な税制が使えなくなるということも考えられるのです。
親が死亡後に相続する場合は?
両親の死亡により、実家が空き家になる場合についてはどうでしょう?まずは相続した財産について、相続税が発生する(基礎控除内かどうか)のか、相続人でどう分割するのかなどを判断しなければなりません。相続税を納める場合は、相続後10カ月以内に申告する必要があるので、実は時間があまりないのです。
実家を売却してキャッシュ化して分割する場合、売りに出したらすぐに買い手がつくというものでもありません。また、相続が続くうちに登記があいまいになっていたり、隣家との境界線があいまいになっていたりすると、もう親からの情報が得られないので、その経緯を調べているうちに時間がたってしまうということも考えられます。
自宅を相続する人が住まない場合、つまり空き家になる場合が問題です。実家の家財の整理の問題などで、とりあえずそのままにしている人が多いのですが、その間に管理をしなければ家の劣化は進み、資産価値が落ちたり、近隣に何らかの被害を及ぼす可能性があります。
放置していたとしても固定資産税は納めなければなりません。また、長く放置していると、相続税を納めた人が相続後3年10カ月以内に売却した場合に、売却した利益にかかる税金を軽減できる「取得費加算の特例」が利用できなくなります。
相続の場合でも、不動産を売って得た利益には、譲渡税がかかります。計算上は、この利益から取得にかかった費用などを差し引けます。取得費は親が取得した際の費用を引き継ぐことになります(不明の場合は売却額の5%とみなす)が、相続税を納めた人の場合、取得費に相続税を加算できるため、計算上の利益が少なくなって税金が軽減されるというものです。
早めに家族で話し合うことが大切
親の介護が必要になったり、親が亡くなったりしたときに、これだけのことを考えるのは難しいと思います。でも、とりあえず放置という状態が続くと、「気づいたときは手遅れ」というデメリットも考えられるので、親の生存中から実家の処分について家族で話し合っておくことをお勧めします。親に言いづらいテーマなので、相続税が話題になったとき、親の知人が亡くなって相続が発生したとき、子供世帯が自宅を取得したときなどのタイミングを利用して、切り出すといいと思います。
日本の場合、相続財産の大半が親の自宅ということが多いので、相続税について税理士などの専門家に早くから相談しておくこともお勧めです。
また、最近では、空き家の見回りや風通し、清掃などを行う「空き家管理サービス」や「遺品整理サービス」を取り扱う事業者が増えているので、思い切って家族以外の人の手を借りることを考えてもよいでしょう。
大切な実家ですから、思い出のために残すことだけでなく、上手に利用することも考えてあげましょう。