技術と用途の押し売り
商品企画者もエンジニアもその点については十分に理解しているものの、商品企画において、技術を搭載することが自己目的化することがある。その結果、現実的ではない用途が口実として捻出されることになる。
つまり、「技術や用途の押し売り」が起きるのだ。
脈拍計や歩数計機能はその一例で、一部のユーザーを除けば必然的な用途とは言えない。現在も他社から腕時計型端末が発売されており、新しい技術を用いた高度な機能などが搭載されているものの、総じてパッとしないのはやはり必然的な用途ではないからだろう。
腕時計型はネタ切れのバロメーター
なぜそうなってしまいがちなのか。そのわけは、腕時計型端末というアイデアが一種の逃げ道のようになっているからだ。ぼく自身、AVメーカーのプランナー時代に多くの商品企画会議に参加したが、ネタ切れになると必ず誰かが言い出すのが腕時計型のアイデアだった。
つまり腕時計型端末はその形状的魅力もあり、アイデアが行き詰まった時に考案される点で、ネタ切れのバロメーターとも言えるのだ。
根強い腕時計型端末へのあこがれ
また、腕時計型端末には人々のあこがれもある。腕時計型の端末は昔も今もSF世界の特別なアイテムだ。映画やアニメの中で、腕時計はトランシーバーとなり、敵と戦う武器となるなど、遠い未来のステレオタイプだ。そうした経験により、新しい技術が誕生すると、メーカーのエンジニアやプランナーには腕時計に搭載しようとする習性がある。その際、実用性に限界があることには目をつぶってしまいがちだ。