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儲かるのは上振れ期待の新薬か安定のジェネリックか?(2ページ目)

先発薬の研究開発・製造・販売をする武田薬品工業。すごい企業ですが、そのビジネスモデルゆえ、業績が変動しやすくなります。後発薬の沢井製薬は、財政難の日本の国策(ジェネリック拡大)を背景に、業績を安定して伸ばしています。さて、投資対象としては、どちらが魅力的でしょうか?

日根野 健

執筆者:日根野 健

公認会計士ガイド

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業績が変動しやすい武田 VS 安定しやすい沢井 その理由とは?

次に、両社の収益性について比較します。

以下のグラフは両社の一株当たり当期純利益と、売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)の推移です。
(一般的に収益性を比較するときに売上高営業利益率を用いますが、医薬品業界は研究開発の失敗や買収など、特別損益が発生しやすいという特徴があります。特別損益に計上される研究開発費や買収等の失敗費用も、大きな目で見れば新薬開発のための費用なので、特別損益も差し引いた当期純利益の方が、より企業の実力を示していると考えられます。このため、営業利益でなく、当期純利益を使用しています。)

【図2undefined武田薬品工業と沢井製薬の収益性比較】

  【図2 武田薬品工業と沢井製薬の収益性比較】


企業規模では、武田薬品工業と沢井製薬では、大きな差がありましたが、1株当たり利益や、売上高当期純利益率では両社の大きな差はありません。差がないどころか、直近3年は沢井製薬のほうが業績がよいといえます。

武田薬品工業は、1株当たり当期純利益、売上高当期純利益率ともに、大きく変動していますが、沢井製薬は変動が小さく、安定しているといえます。

なぜ、同じ医薬品でも先発医薬品と後発医薬品とで、このような違いが生まれるのでしょうか? その背景には、先発医薬品企業と後発医薬品企業のビジネスモデルの違いがあります。

先発医薬品企業は、新薬を研究開発して、これを製造・販売し、利益を得ます。そのため、新薬の研究開発が成功すれば、多額の利益を得ることができます。しかし、新薬候補となる物質が実際に新薬として販売可能となる確率は10,000分の1以下といわれています。新薬の研究開発に成功し、販売に至るのは非常に難しいのです。新薬の研究開発がうまくいかないと、研究開発費だけが増加して、利益は減ってしまいます。

先発医薬品企業はこのようなビジネスモデルのため、業績の変動が大きくなる傾向があります。

これに対し、後発医薬品企業は、先発医薬品のうち特許が切れたものについて、同じ有効成分で効能・効果が同一の後発医薬品を、先発医薬品より安い価格で販売して、利益を得ます。新薬の研究開発は行わずに、既に販売されている医薬品と同じ有効成分で効能・効果が同じ後発医薬品を製造、販売します。

後発医薬品は、既にどれだけのマーケットが存在するかが、確実に分かります。なぜなら、過去に日本国内において、対応する先発医薬品が1年間でどれだけ消費されたかが、わかっているからです。売上の見通しが立てやすいというメリットがあるのです。後発医薬品企業は、儲かる可能性の高い医薬品に絞って、製造・販売することができるので、業績は安定します。

このように、先発医薬品企業は、新薬を発売できれば非常に大きな売上と当期純利益を得ることができるというメリットがありますが、新薬開発に失敗すれば多額の研究開発費を回収できず業績が大きく悪化する可能性もあります。

一方で、後発医薬品企業は、既に販売されている医薬品を安い価格で販売するので、売上や当期純利益は比較的小さくなりますが、確実に儲かると期待できる医薬品のみを販売できますし、研究開発の失敗による多額の損失が発生しないので、業績は安定します。

それでは投資対象としては、業績の変動が大きい先発医薬品企業と、安定的な後発医薬品企業のいずれの方が魅力的でしょうか?

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