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儲かるのは上振れ期待の新薬か安定のジェネリックか?(3ページ目)

先発薬の研究開発・製造・販売をする武田薬品工業。すごい企業ですが、そのビジネスモデルゆえ、業績が変動しやすくなります。後発薬の沢井製薬は、財政難の日本の国策(ジェネリック拡大)を背景に、業績を安定して伸ばしています。さて、投資対象としては、どちらが魅力的でしょうか?

日根野 健

執筆者:日根野 健

公認会計士ガイド

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苦痛を減らす新薬開発と財政に優しい後発医薬品、どちらも大切

後発医薬品は、先発医薬品と同じ有効成分で効能・効果が同じで、しかも価格が安いですから、社会保障費の抑制のため厚生労働省は後発医薬品の使用をすすめています。

下の表は厚生労働省のウェブサイトにある後発医薬品(ジェネリック医薬品)の市場シェアの推移です。

【図3undefinedジェネリック医薬品の市場シェアの推移】

【図3 ジェネリック医薬品の市場シェアの推移】



このように、後発医薬品の市場シェアは順調に増加していますので、今後も安定的に成長することが見込まれます。その結果、後発医薬品企業は大きく業績拡大することが予想できるので、後発医薬品企業への投資は魅力的といえるでしょう。

しかし、もう少し広い眼で見てみましょう。確かに後発医薬品は安いです。しかし、後発医薬品はあくまでも、後発です。逆に先発医薬品は高いですが、先発医薬品企業はそこから得られる多額の利益を研究開発費にも使っています。そして、今までにない新薬を開発し、患者の苦痛を減らすために、日夜努力しています。

後発医薬品の市場規模が拡大しすぎて、先発医薬品企業が衰退すると、将来の新薬開発も衰える可能性があります。2013年の12月以降に流行して、深刻な問題となっているエボラ出血熱を治療する承認された薬は、現在はありません。薬を開発するには、多額の資金が必要です。その資金は、高い価格の先発医薬品を販売して、多額の利益を計上して、獲得します。そして、その資金で研究を行って、新薬が開発されると、エボラ出血熱を治療することができます。先発医薬品企業は、新たにより多くの命を救うことができるのです。

このような新薬の開発は後発医薬品企業では不可能です。少しでも多くの命を救うためには、先発医薬品企業の研究開発が欠かせないのです。

そして、先発医薬品企業が研究開発に成功した画期的な医薬品は、日本だけでなく世界中で販売されることになります。これは後発医薬品企業にはマネができません。

したがって、国の政策としても後発医薬品ばかりを優遇すると、結果的に新薬開発がおろそかになってしまい医療の進歩を止めることになります。一方で、先発医薬品ばかりを使用すれば、社会保障費が増加の一途をたどり財政がパンクします。

投資対象としても、どちらが正解というのはありませんが、新薬の研究開発に成功し世界的なヒット医薬品(ブロックバスターと呼ばれます。)の登場に期待するならば、武田薬品工業のような先発医薬品企業。夢は追わず、現実的に売上と利益の安定増加を期待するならば、沢井製薬のような後発医薬品企業に投資する。というのが良いのではないでしょうか。

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