医薬品をもっとも使用するのは、やはり老年人口です。厚生労働省の「最近の調剤医療費の動向」によれば、2014年3月において、調剤医療費のうち54.6%は老年人口が使用しています。
つまり、老年人口が増加していく日本においては、当面、医薬品市場の拡大が期待できます。実際、厚生労働省が発表する将来の社会保障費は、年々増加していくことを予想しています。
それでは、拡大が予想される医薬品業界のうち、どのような企業が高い利益をあげることができるのでしょうか?
新薬の武田薬品工業とジェネリックの沢井製薬の規模を比べてみる
日本の医薬品業界に属する企業は、大きく2つに分類できます。1つ目は先発医薬品企業です。先発医薬品企業とは、新薬を研究開発し、これを製造・販売して利益を得る企業です。武田薬品工業(4502)は代表的な先発医薬品企業で、2014年3月末の株式時価総額3兆8631億円、日本の製薬会社で最も株式時価総額が大きな会社です。
2つ目は後発医薬品企業です。後発医薬品企業とは、特許の切れた医薬品を先発医薬品よりも低い価格で販売して利益を得る企業です。沢井製薬(4555)は代表的な後発医薬品企業で、2014年3月末の株式時価総額2325億円、後発医薬品企業では最も株式時価総額が大きな企業です。
このように、医薬品業界を大きく2つに分類して、それぞれの業績や特徴をみてみましょう。
下のグラフは武田薬品工業と沢井製薬の過去5年間の業績比較です。
株式時価総額は武田薬品工業のほうが圧倒的に大きいのと同様に、売上、当期純利益ともに、武田薬品工業は沢井製薬の何倍も大きいことがわかります。
近年では、高齢化を背景として、日本の社会保障費は拡大し続けています。1000兆円を超える莫大な負債を抱えている日本の財政にとって、社会保障費は大きな負担になっています。そこで、少しでも社会保障費の増加を抑制し、財政を健全化していくために、厚生労働省は後発医薬品の使用をすすめています。
後発医薬品は、国から応援されているのです。
国から応援されている企業は、儲かるだろう、と期待できます。しかし、少なくとも現時点においては、時価総額や売上、当期純利益といった業績の側面から見れば、先発医薬品のほうが圧倒的に儲かっているといえます。
投資対象としては、現に多額に儲けている先発医薬品企業と、今の稼ぎはまだ小さいが国から応援されている後発医薬品企業の、どちらのほうが魅力的でしょうか?